彼と私の航海日誌

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車一台が通るのがやっとな山道に、決してけもの道ではないだろうその道をひたすら歩く。
歩けど歩けど木ばかりで……しかもなんかちょっと歩いてきた道と違うんだけど、あれ?これホントに迷子になっちゃったんじゃない……?
「え……うそぉ……」
携帯も使えないし帰り道もわからないしでもう泣きそうだ。

「オネーさんどうしたの?」

誰か助けて、と小さく零すと後ろから声が降ってきた。
吃驚して振り返るとニコニコと笑みを浮かべた男の人が立っていた。
人が居たことは凄く嬉しい
嬉しいんだけど……
明らかにちょっと関わっちゃいけないような人だ。
茶髪にリーゼントって80年代のスタイルですよ、お兄さん……
思わず数歩後ずさってしまった私に不思議そうに小首を傾げた彼はもう一度どうしたの?と声をかけてきた。
「い、いや……道に、迷ってしまって……」
そう言った私に観光客?と小首を傾げた彼
それにコクリと頷くとヘェ、と声を漏らしたお兄さんは私を上から下まで見やった。
そんな彼からソッと視線をそらして目的地の御茶屋の名前を告げ知っていますか?と聞けば下げられた眉。
「俺もココの人間じゃねぇからなぁ。町までなら案内できるぜ?」
行く?と辺りを見回して私に視線を戻したお兄さんはそう言うとニッコリと笑みを浮かべた。
それに思わずお願いします。と返した私に、お兄さんはまた笑みを浮かべると私の手にあったボストンバッグを持って歩き出してしまった
それに慌てて自分で持ちます、とそんなお兄さんの後を追いかければ重そうだからね、と肩に担がれたソレに、仕方なくスイマセンと謝り彼のあとを慌てて追いかけた。

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