金色猫とタンゴ

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「お前さん、母親はどうした……?」
事故か病気か?と暫くそんな幸の頭を撫でていたマルコは不意に思い出した『片親』の存在に、そう幸へと問いかけると小さく肩を震わせた幸に怪訝そうにその眉間に皺を寄せた。
「あー……悪ぃ。嫌な質問だったか」
「母さんは……私が小4の時に男作って家を出てった」
シン、と静まり返った室内に、押し黙る幸へと言いたくなきゃ言わなくて良い、と声をかけようとしていたマルコは不意にそう声を漏らした幸を見やると小さく息を呑み、口を噤んでしまった。
自分が想像をしていたより遥かに複雑な幸の家庭環境に、なんと言葉をかけようか、と言葉を選んでいたマルコは不意に顔を上げたアメリアに、小さくその顔に笑みを浮かべる幸を見やるとはた、と目を瞬かせた。
「ろくでもない母親と、ろくでもない父親の間に生まれたんだ。ろくでもない子供に育ったって、おかしくない」
そう言って徐にベッドから立ち上がった幸に、部屋の隅へと置いていた鞄を拾い上げた幸を見やったマルコはふと、自分を振り返りその顔に自嘲の笑みを浮かべた幸を見やると知らず知らずに手を握りしめていた。
「こんな人間、助けてくれなくたって良かったのに。お人好しだね、マルコって……」
「お前ぇが、捨てられて今にも死にそうな野良猫みてぇな顔してたからよぃ。思わず拾っちまったんだよぃ」
そう言ってじゃぁね、とそのまま部屋を後にしようとしていた幸は、そんな自分の背へと声をかけたマルコにピタリ、とその歩みを止めるとベッドから立ち上がったマルコを怪訝そうに振り返った。
「まだお前ぇさんは18だ。人生の半分も生きちゃいねぇのに自分がろくでもねぇ人間だなんて決めつけんじゃねぇよぃ。一つ、繋がりが増えたんだ、これからはお前ぇさんが変な方向にいかねぇよう俺がちゃんとお前ぇさんを育ててやるよぃ」
「…………は?」
そう言ってグシャグシャッ!と撫でられた頭に、微笑を浮かべるマルコを呆けた様に見上げた幸は、そんな自分を見下ろしふと、その口元に柔和な笑みを浮かべたマルコを見やるとグッと口を引き結んだ。
「寂しくなったらいつでも来い。愚痴でもなんでも、聞いてやるからよぃ。だからあんまり他所の野良と喧嘩すんじゃねぇよぃ」
「………っ!!!ドーモ助けてくれてありがとうございましたっ!!!」
そう言ってどこか楽しそうに笑いポンポン、と頭を撫でたマルコに、その顔を紅く染めた幸はそう声を荒げると逃げるようにマルコの家を出ていったのだった。



金色猫はニャァと泣く



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