お話T

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祭囃子が聞こえる会場に、出店が沢山並ぶ通りを見て思わずわぁ!と感嘆の声を上げてしまう。
私の居た世界と同じその風景に、コッチの世界でも夏祭り、と言うものはあるんだなぁと感心していれば一緒に島に上陸していたマルコさんにポン、と頭を撫でられた。
「ココは親父の島だから気ぃ張る必要もねぇよぃ」
目一杯はしゃげ、と笑ったマルコさんに、ウキウキが伝わっていたんだろうそう言われた事がちょっと恥ずかしくて子供じゃありません、と言葉を返せばまた笑ったマルコさんにクシャリと頭を撫でられた。
「欲しいもんがあれば俺が何でも買ってやるよぃ」
「あー、はい……。なんかマルコさんお父さんみたい」
そう言って撫でられる頭に、甘やかされるのは嬉しいのに言い方があまりにも子供を相手にしているみたいで心境複雑だな、と不貞腐れればまだそんな歳じゃねぇよぃ!と声を上げたマルコさんにクシャクシャ!と髪の毛をかき混ぜられた。
「ほら、エースが屋台の食いモン全部食っちまう前に行かねぇと」
「そういえばエース君真っ先に上陸して行きましたからねー」
涎垂らしながら町に消えていったエース君を思い出し、今頃きっと何軒かの屋台はもう店じまいをしているんだろうな、と思いながら手を引き歩き出したマルコさんの隣に並んで屋台の立ち並ぶ通りへと向かった。





空島綿菓子にバナナワニチョコに、と色んな島から集まる屋台の食べ物を堪能しつつあちらの世界にもあった『りんご飴』を購入した私は甘いモンばっかだねぇ、と苦笑を洩らすマルコさんをチラリと見てりんご飴に齧りつく。
「お祭りの雰囲気ってこう、無駄に色々食べたくなりません?あとは魚人クレープとはっちゃんたこ焼きも食べたいな!」
「俺ぁさっき食った水水肉だけで十分なんだけどねぃ……」
そう声を弾ませれば、よく食うねぃ…と呆れたように笑ったマルコさん。
離れかけた手に、手を繋ぎ直したマルコさんを見て食べますか?と手にしていたりんご飴を差し出せばキョトリと目を瞬かせたマルコさんが苦笑を漏らしてソレへと齧りついた。
シャクリ、ポロポロポロ…と零れる飴の欠片に、赤く染まったマルコさんの口元を呆けたように見ていれば甘ぇな…と小さく眉を顰めた彼がペロリと唇についていた残骸を舐め取った。
それがどこか艶めかしく見えて、そんなマルコさんから手元のりんご飴へと視線を落す。
てっきり要らない、って言われると思ってたから食べてくれるとは思わなかった……。
うわぁ、間接キスだぁ、と一人ドギマギとしていればお…、と声を漏らしたマルコさんが徐に足を止めた。
ソレに同じように歩みを止めればヒュー ドォンッ!!と空に咲いた綺麗な花。
「わぁ!!花火も上げるんですね!」
「また今年は随分と盛大だねぇ」
次々と上がる花火に、すごい!!と声を弾ませれば同じように空を見上げていたマルコさんがふと、私に視線を落して柔和な笑みを浮かべた。
「此処じゃゆっくり花火も見れねぇな、ちぃと場所を移すかねぃ」
「え……?」
そう言って引かれた手に、人混みの中から脱け出したマルコさんのあとについていけば屋台の裏へと出たマルコさんが徐にその姿を不死鳥へと変えた。
『特等席で花火見物と行こうかねぃ』
「―――!!はいっ!」
そう言ってどうぞ、お嬢様。と身を屈めてくれたマルコさんにその背中へと跨り首元へと手を回せばその大きな翼を広げたマルコさんが一気に空へと飛び上がった。
「わぁっ……!!すごい!マルコさん!!こんなに花火が近いですよ!」
『ちぃと煩ぇが、迫力があって良いねぃ』
すぐ近くで大輪を咲かせる花火に、ドォォォンッ!!とお腹に響いたその音も全然苦にならなくて、言葉じゃ表現しきれないその光景にギュッとマルコさんの首元に抱きつけばクツリと喉を震わせたマルコさんがその顔を頬にすり寄せた。
『お気に召したかよぃ?お嬢さん』
「はいっ!とっても!!」
そうどこかおどけたように言ったマルコさんに声を弾ませればそんな私を見やったマルコさんがひどく優しげな笑みを浮かべた。


1.煌めく世界ときみ
     『確かに恋だった』様より【きみと夏まつり5題】


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