お話T

□知念
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放課後になって、教室に戻ってみると私の隣の席に知念君がうつ伏せていた。
服装が制服のままだからきっとHRが終わってすぐぐらいに寝てしまったんだろう。

部活大丈夫なのかな?

なんて思いながら知念君に歩み寄る。
自分の腕を枕にして気持ちよさそうに寝ている知念君を見て私は手に持っていた日誌に視線を落とす。

どうしようね…、知念君に今日の報告書いてもらわないと先生に提出できないんだけどな……。

そんなことを思いながら再び知念君を見る。

「髪の毛……サラサラだな……」
たまに窓から入ってくる風に知念君の黒髪が揺れる。

「睫毛……長いなぁ」
羨ましいくらい長い睫毛。
手も足も長くて背が高い。
モデル体型の知念君。

「羨ましい……」
ぽつりと呟いてそっと知念君の髪に触れる。
サラサラと指をすり抜ける髪。

「……しちゅんさぁ……」

綺麗な髪を持った君が。
モデルのような君が。
口下手で女子が苦手な君が。
それでも、不器用なりにとても優しい君が………


「しちゅん……さぁ」
もう一度呟くと髪に触れていた手が一回り大きな手に掴まれた。

「―――っ?!」
ビックリして知念君を見ると視線がぶつかった。

「知、ちね「うんぐーるくとぅは起きてる時にあびれぇ……」」

言ってすぐに手を離した知念君は何事もなかったように私が持っていた日誌を受け取りペンを走らせた。
私は立ち去った方が良いのかここにいたほうが良いのか分からなくてただ知念君の横顔を見つめた。

「わん、なまから部活やくとぅくり、先生にゆたしく」

そう言って日誌を手渡す知念君。
鞄を手に取り立ち上がる知念君を見ていたらふと、知念君が私を見下ろした。

「わんも……うんじゅが、しちゅんだしよ」
そう言ってポンと軽く私の頭を撫でた知念君。
小さく笑みを浮かべたあとに、じゃぁ、と教室を出て行った。
初めて見る知念君の笑みに私は持っていた日誌を落とした。


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