お話T

□U
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朝、通学路を歩いていると公園にクラスメイトの甲斐裕次郎の姿を見かけた。
何やってるんだろうと思ったら猫と戯れてた。
まぁいいやと思いつつそのまま学校へ行って教室に入り隣の席の平古場にさっき甲斐見たよぉとか話したら何で連れてこなかったと激しくわじられた。
理不尽だとか思いながら甲斐が来るのを待つ。
待って、待って、待って、やっと登校してきた時には朝のHRが終ったあとだった。
風紀委員である平古場にわじられる甲斐を見つつ、毎度毎度何故同じことを繰り返すんだろうと思ってしまう。





次の日の朝、通学路を歩いていると海辺で甲斐の姿を見かけた。
何やってるんだろうと思ったら外国人のダンサーとラップを踊っていた。
朝から元気だなぁなんて思いながらそのまま学校へ行く。
HRが終って1限目が始まる少し前になってやっと甲斐が登校してきた。
昨日みたいに平古場に怒られる甲斐を見て平古場も大変だなぁなんて思ってしまう。




最近よく登校中に甲斐の姿を見かけるようになった。
近所の小学生と遊んでたり露天商のニィニィとダベってたり。
そして遅刻をして毎度のことながら風紀委員の平古場に怒られる。
甲斐も平古場も毎日飽きないなぁなんて思いつつそれを眺めている。




翌週、朝、通学路を歩いていると公園にまた甲斐がいた。
今度は何をやってるんだろうと思ったら鳩に餌を上げていた。
群がる鳩に微動だにせず楽しそうに餌を与える甲斐に私は歩み寄る。
「え〜(おーい)甲斐。今日も寄り道ばぁ?平古場にわじられるさぁ」
「おー、ぃやーか」
声をかけた私に甲斐に群がっていた鳩が飛んでいく。
甲斐はそれを見送ってから私を振り返る。
「たまには登校時間にいちゅんのもしむんどぉ(いいよ)」
「おー、じゃぁいちゅんか」
そう言って私と並んで歩き始めた甲斐。
今日はこれで平古場に怒られなくてすむな、なんて思って少し笑った。

学校について久しぶりに遅刻せず来た甲斐を見て平古場がありえないと呟いた。
私が連れてきたんだよぉ、と言ったらもっとありえないと言われてしまった……。




それから私は登校時甲斐を見かけると一声かけて一緒に学校へ行くようになった。
遅刻常習犯だった甲斐が最近時間どうりに登校するようになって先生達も吃驚していた。
「しが、ぬぅんちぃやーがあぬひゃーとまじゅん来るんやっさー?」
「んー?だって登校中に見かけるし」
「は……?あぬひゃーとぃやーの家は正反対だばぁ……?」








次の日も私は通学路を歩いていると海辺で座り込んでいる甲斐を見つけた。
「え〜、甲斐〜!」
「おー、うきみそーちぃ!」
私の姿を見つけると立ち上がって駆け寄ってきた。
おはようと返して砂のついているズボンをはらってやる。
「ねぇ、甲斐」
「ぬぅがや?」
「今度からちゃんと迎えに行ってあげるさぁ、やくとぅ遠回りしなくてもしむんどぉ」
そう言った私に顔を真っ赤にさせた甲斐がいた。


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