お話T

□甲斐T
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木手に『甲斐君探してきなさいよ』と命令されて早10分

一向に探し人は見つからない。

けど見つけないと木手に理不尽にもゴーヤを食わされるから必死で探す。
グッバイ私の昼休み。



平古場や知念に裕次郎を見なかったか聞いてみたけど二人とも首を横に振るばかり。

もう半分諦めかけたところでふと校庭の木の陰に見慣れた帽子が映った。
歩み寄って見てみるとやっぱりそれは裕次郎でなんだかすごく気持ちよさそうに寝ていた。

私の気も知らないで……っ!!

しゃがみ込んで顔を覗き込む。
どうやら熟睡しているようで口を半分開けて寝息を立てている。

トレードマークの帽子を奪い取り頭にかぶる。
ぶかぶかでちょっとずり落ちてくる帽子を被り直して裕次郎のふわふわの髪を鷲掴む。

横広がりに伸びた髪で裕次郎の顔をくすぐると鬱陶しそうに眉間に皺を寄せる。

「ホント、いん〔犬〕みたいなからじしちょるねぇ」

可愛い、と呟いてグシグシとそんな裕次郎の髪を撫で回す。
流石にそれには目が覚めたんだろう何度か瞬きをした後、裕次郎は髪を撫で回す私の手を掴んだ。

「えー、ぬぅするんばぁよ……」
「ん?裕次郎の髪がいんみたいでしちゅんだなぁって」

そう言った私に裕次郎は少し不服そうな顔をする。

「えー……、わんのからじがいんみたいだからわんがしちゅんなぬかよ、ぃやー」
「あらんさぁ、裕次郎みたいだからいんがしちゅんなんだよ」

昔は嫌いだった犬を好きになったのも裕次郎のお陰ともいえる。
そう言った私に裕次郎は満足そうな笑みを浮かべると私を抱き寄せた。

「わんも、ぃやーがいっぺぇしちゅんさぁ」

そう言って私を抱きしめたまま再び寝息を立て始めた裕次郎に仕方なく私もそのまま眠りに入る。



その後私と裕次郎が木手に生のゴーヤを食べさせられたのは言うまでもない。


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