お話T

□ハロウィン企画
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※長編夢主
「おーい!」
かけられた声に後ろを振り返ればマントをはためかせながらエース君が手を振っていた。



「どうしたの?」
満面の笑みでこちらに駆け寄ってきたエース君を見やればその頭にはいつものテンガロンの上に何故かビスタさんのシルクハット。
黒いマントを素肌に身に付けたエース君の格好はさながら変た……、異様だ。
不思議な格好をしているエース君に首を傾げれば二カッと笑った彼が両手を差し出した。

「Trick or Treat!!」

久しぶりに聞くその言葉に、こっちの世界でもそういうのがあるんだなぁなんて感心していれば手を出していたエース君が菓子は?と首を傾げた。
それにお菓子なんてあったかな、とポケットを探っていればねぇなら悪戯すんぞ!とポケットからペンを取りだしたエース君。
ペンには『油性』の文字。
ひどく楽しげにキャップを取ったエース君に慌ててストップの声をかけた。
「ア、アメならあるから!!」
そう言って朝にサッチさんから貰ったアメを差し出せばどこか残念そうに口を尖らせたエース君がありがとう、と言って早速それを口へと放り込んだ。
「朝からやってるの?」
「オウ!大漁だぜ!!」
そう言って笑ったエース君はパンパンになったポケットを叩くと至極満足そうに笑った。
それに面白そうだね、と零せばお前もやれよ、と言って何故かエース君のテンガロンと首飾りを渡される。
仮装ならなんでも良いのかな……。
一応ありがとう、とお礼を言ってソレを身につければ笑みを浮かべたエース君はサッチのとこ行ってくる!と言って船内へと入っていった。





すれ違う人に頭に被った帽子を指差され何だそれ?と聞かれる。
それにハロウィンです。と返せばあぁ、とどこか納得したように頷いた彼等はまだ何も言ってないのにお菓子をくれた。
袋に一杯になったお菓子を一旦部屋へと置きに行き再び船内を歩きまわる。
時たますれ違うクルーの人の中には顔にペンで渦巻きや髭が書かれている人がいてあぁ、エース君の餌食になったんだな、と思うと少しだけ可哀想に思えた。
そんなことを思いながら目の前の扉をノックすれば中から聞えてくる彼の声。
それに失礼します、と声をかけて扉を開けば机に向かうマルコさんの姿があった。
顔を上げた彼もやっぱり私の頭に乗っているエース君のテンガロンを見て首を傾げた。
「そりゃぁ、何だぃ?」
「あ、ハロウィンです」
そう言ってチョイ、と帽子に触れれば苦笑を洩らしたマルコさんが手にしていたペンを机へと置くと私へと向き直った。
「それで、可愛いエースの真似っ子さんは俺になんの用かねぃ?」
そう言って柔和な笑みを浮かべたマルコさんにふふ、と笑って手を差し出す。

「Trick or Treat!」

そう言った私にマルコさんは肩を揺らすと徐にポケットからチョコレートを取りだした。
手の平に置かれたそれに、普段甘い物を食べない彼がソレを持っていたことが不思議で首を傾げればさっきエースが来たよぃ、と笑った彼。
それに納得してもう一度手の平のチョコレートを見やる。
エース君が船内を駆けまわっているせいかなかなか悪戯ができないのだ……。
マルコさんなら持ってないと思ったのに……
小さく残念だ、と零せばクツリとマルコさんが笑う。
それがちょっと悔しくて小さく溜息を吐きだして早速貰ったチョコレートを口へと放り込んだ。
甘いそれにふふ、と笑みを零せば徐に伸びてきた手。

「Trick or Treat」

差し出された手に首を傾げてマルコさんを見やれば零された言葉。
ソレに彼の手を見て、小さく笑みを浮かべるマルコさんを見やり、数歩後ずさる。
「へ、部屋にならありますから!」
ねぇのかぃ?とどこか楽しそうに笑ったマルコさんに取ってきます!と部屋を出て行こうとすれば捕まる手。
引かれた手にマルコさんを振り返れば酷く楽しそうに口元に笑みを浮かべる彼が目の前に立っていた。
「ねぇんなら……悪戯だよぃ?」
「ちょ、待っ……!?」
ゆっくりと近づいてきた顔にギュッと目をつむれば唇に当たる柔らかい感触。
離れていった唇にそっと目を開ければ柔和な笑みを浮かべた彼がいた。
「マル、コさん……」
「さて、じゃぁちょいと休憩しようかねぃ」
ゆるりと撫でられた頬に言葉を詰まらせれば小さく笑みを零した彼が私を肩へと担ぎあげた。
逆さになった視界にエース君のテンガロンが床へと落ちるのを見て小さく声を上げればトサリとベッドへと下ろされる。
「マッ、マルコさん……?」
「悪戯はこれからだよぃ」
そう言って喉を震わせたマルコさんは再び私にキスをした。



君に悪戯
  2014.10.31ハロウィン企画

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