お話V

□V
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長編夢主

「お花見…ですか?」
「あぁ、パオズ山の近くで咲いている所を見つけてな。たまには良かろう」
そう言って私から視線を逸らしたピッコロさんに、珍しくもお厳しいお師匠様から花見でもせんか、と誘われた私はそんなピッコロさんを呆けたように見上げてしまった。
いったいどういった風の吹き回しだろう……?
いつもデートと称して極寒の地に連れて行かれたり恐竜さえ餓死するような砂漠地帯に連れて行くあのピッコロさんが『お花見しよう』なんて………
明日は宇宙人が地球に攻めてくるかもしれないな……なんて思っていたらグワシッ、とピッコロさんに頭を鷲掴まれた。
「嫌ならばそう言えばいいだろうっ……!!」
「じょ、冗談ですよ!冗談!!行きましょう花見!!」
そのままギチリ、と手に力を込めたピッコロさんに慌ててそう声をあげればフン、といささか不機嫌そうに鼻息を漏らしたピッコロさんはやっとその手を離してくれた。
相変わらず人の心を覗き見るの好きだな、と思いながら痛む頭を押さえソッとそんなピッコロさんから少しだけ距離をとる。
再び伸びてきそうだった手を避けた私に、そんな私を見たピッコロさんはその眉間に皺を寄せると顔を背けてしまう。
「お花見なんて初めてです!さっそく悟飯君達にも声かけてきま、グエッ……?!」
「悟飯は大学の勉強とやらで忙しいだろう。味気ないだろうがお前と俺だけでやるぞ」
そう言って神殿から飛び出そうとすればピッコロさんに襟首を掴まれて変な声が出てしまった。
ってかせめてもうちょっと優しい引き止め方出来ないんですかね?!
仮にも一応恋人なんですけど?!
締まった首にそんなピッコロさんに講義の声をあげようとすれば、そう言ったピッコロさんが掴んでいた襟首をパッと離してそのまま神殿に歩き出してしまった。
2人だけでやると言ったお花見に、遠ざかるピッコロさんの背中を呆けたように見つめる。
それって、デートって事でいいんだよね?
うわぁ………!!どうしよう、凄く嬉しい!!
「じゃぁお花見弁当作ります!!リクエストありますか?!」
「俺は別に水があればそれでかまわん」
「それじゃ味気ないですよー!やっぱりお花見と言えば手作り弁当じゃないですか!!」
そう声を弾ませてピッコロさんに駆け寄りその腕に抱き付けば、小さく口元に笑みを浮かべたピッコロさんにクシャリ、と頭を撫でられた。


 ―――――――
そしてやって来ましたお花見当日!!
ピッコロさんが言っていた場所へとお花見弁当片手に向かった私達は既にどんちゃん騒ぎが行われているそこに、呆けたようにピタリ、と空中に静止してしまう。
「あ!アンタ達遅いわよー!先に始めちゃってるわよ!」
そう言って降りてきなさーい!と大手を振ったブルマさんに、ピッコロさんと顔を見合わせて取り敢えず、と地面に着地する。
お馴染みのメンバーが集う広場に、二人して呆けたように騒ぐクリリンさん達を見ていれば、こちらへと悟飯君が駆け寄ってきた。
「…………コレは……一体どーいうことかなぁ?悟飯くーん?」
「あ、いやぁ……その、ピッコロさん達がお花見するって思わずポロッと悟天に言っちゃって……」
そう言ってガシリ、と悟飯君の襟首を掴み上げればアハハハハ!なんて笑った悟飯君に昨日嬉しさのあまりピッコロさんとお花見するんだ!なんて思わず悟飯君に報告してしまった自分を激しく後悔した。
そりゃそうだ、悟飯君嘘ヘタだしましてや悟天君に知られればおのずとトランクス君経由でベジータさん達にまで広まるのは目に見えていたはずなのに…………
「ほっっっっんと空気読まないね!!!」
「す、すみませんっ……!!」
「まぁそう言ってやるな。悟飯もたまには息抜きをせんとな」
そう思わず上がってしまった抗議の声に、そう言ったピッコロさんはそんな私の頭をポン、と叩くと手を振る悟空さんの元へと歩き出してしまった。
ホント、相変わらず悟飯君には甘々なんだから!
「ご、ごめんね……?僕1人じゃ父さん達のこと止められそうになくてさ………」
そのまま輪の中に加わってしまったピッコロさんにもーっ!と地団駄を踏めばそう言った悟飯君がホント申し訳なさそうに謝るものだからもう何も言えなくなってしまった。
当初は誘う予定だったんだから仕方ない……と、そんな悟飯君の頭を苦し紛れにグシャグシャ!!と撫でつけてこちらに視線を寄越すピッコロさんの元へと向かった。






いい具合に酔っ払う武天老師様やヤムチャさん達に囲まれそんな彼らへとお酌をしていた私は、その輪からいつの間にか居なくなっていたピッコロさんにアレ?とあたりを見回した。
けれどもどこにも見当たらないピッコロさんに、どこに行ったんだろう?と首を傾げていれば不意に脳内にピッコロさんの声が響いた。
『手が空いたのなら上へ来い』
「うえ……?」
そう響いた声に桜並木を見上げれば、木々の間からピッコロさんの姿がチラリと見えた。
それにどうしたんだろう?と首を傾げていれば酒が無いぞ〜、と次を催促した武天老師様に手にしていた新しい徳利を押し付けそんなピッコロさんの元へと向かった。


「こんなところで何してるんですか?」
お花見は?と腕を組み宙へと浮かぶピッコロさんの元までやってこれば、花ならココからでも十分見えるだろう、と言葉を返したピッコロさんが顎で眼下をさした。
それに習って下を見下ろせば満開の桜が眼下に広がっていてとても綺麗だった。
「うわぁ!凄い!絶景ですねー!」
それにそう声を弾ませれば、そんな私を見やったピッコロさんがふと、その口元に笑みを浮かべるものだからなんだか嬉しくなってしまった。
「来年こそは、2人で来ましょうね」
「あぁ、そうだな」
皆でワイワイ騒ぐのも楽しいけれど、やっぱりピッコロさんと2人だけでお花見もしてみたいからな、とそう言ってピッコロさんの隣にチョコンと膝を抱えれば、そんな私を横目に見やったピッコロさんに腕を引かれ膝の上へと乗せられた。
お腹に回された腕に私を抱え込むピッコロさんをソッと仰ぎ見れば、合った視線にフイ、とどこか気恥ずかしげにそんな私から視線を逸らしてしまったピッコロさん。
少しだけ紅くなった彼の耳に、フフ、と笑いそんなピッコロさんへと凭れかかれば回された腕に少しだけ力がこもった。
「来年が楽しみだなぁ」
「あぁ……そうだな」
そう言って笑みを零せば小さく頷いたピッコロさんが同じようにその顔に笑みを浮かべてくれた。




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