お話V

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「そういえば……玉藻さんって、その……妖怪、なんですよね?」
ズズズッと二人で食後の茶をしばきながらふとそんな事を口にしてみる。
ホントこの人に湯呑似合わないな!笑ったら首飛ぶから笑わないけど!!
そう言ってチラッと玉藻さんを見やれば湯呑に視線を落としていた玉藻さんが私を見た。
目が合った瞬間逸らしたけど、私が。
流石に直視はできない。まだこの美形さんの顔には慣れてないチキンなんだよ。
「えぇ、齢400歳の妖狐です」
昨日見たでしょ?とかけられた声に一瞬だけですよ、と返せばでは思う存分見てください、とその姿を妖狐へと変えた玉藻さん。
大盤振る舞いですね……!!でもちょっとゴキゴキゴキって音立てながら変身するのやめてくれませんか?!地味に怖いんですけど!!
「えぇっと……ご丁寧にありがとうございます。格好良い?ですね」
「無理に感想を述べなくても結構」
そう言ってそのまま湯呑に口をつける玉藻さんに、大型動物とお茶してる女の子ってそうそういないよな、とか思いつつ私も湯呑に口をつける。
コレでコレが玉藻さんじゃなければ頭撫でくり回してたのに……クソ、可愛いな妖狐!!
無類の動物好きの私にとって今の目の前の状況は蛇の生殺しだ。
あぁ、ちょっとで良いから触りたい……!でも触った瞬間刺又でブスリ、なんて嫌だし……。
頼むだけ頼んでみようか、いやでも自分から死亡フラグ立てるわけにはいかないし、と悶々と悩んでいれば銀色のふさふさとした毛が目の前にチラついた。
「起きてますか……?」
「………起きてるんで尻尾で頬っぺた叩くの止めてください」
ペシペシ、と顔を叩く妖狐の尻尾に、想像以上に長いソレを見て玉藻さんへと視線を向ければ起きてましたか、と声を漏らした玉藻さんがスッと湯呑を差し出した。
「おかわりを」
「我が家の如く寛ぎますね!!」
仕事良いんですか?!と流石に声を上げた私に今日は夜勤です、と言葉が返ってくる。
あぁ、どうもそれはお疲れ様です。
じゃなく!!あぁ、もう……何か言うだけ無駄な気がしてきた……。
フルリ、と振られた尻尾を見やり差し出された湯呑を受け取る。
あ、ちょっとお手てに触れた!想像してたより剛毛だ。でも普通の狐とはまた違うからそれは当たり前か……、とか思いつつ湯呑にお茶を注ぎ玉藻さんへと差し出す。

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