お話V

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「あー、焼き魚と卵焼きしかないですけど……」
どうぞ…、と言って玉藻さんの前に朝食を置けばありがとうございます、と言った彼が早速お味噌汁へと手を伸ばした。
「……油揚げが入ってませんね」
何故です?とでも言いたげに私を見やった玉藻さんに自分のお椀を見て玉藻さんへと視線を戻す。
油揚げ…?そんなもん入れたり入れなかったりまちまちだよ?
「その時の気分で具材は変わりますけど……」
「そうですか、なら明日は入れておいてくださいね」
そう言って平然とした顔でお味噌汁を啜る玉藻さんに、お椀と玉藻、というのはとてもミスマッチだなぁ、とそんな玉藻さんを見ていたけど……この人今変なこと言わなかったか……?
「え……?『明日は』……?」
「えぇ、油揚げの味噌汁ですよ。それとも明日は洋食なんですか?」
いや、そうじゃない!!私が言いたいのは明日『も』朝食を食べにくるのかってことだよ?!!
何で普通にコッチでご飯食べるの決定されてるの?!家主の許可は?!ってかそもそも食べに来てくださいなんて言った覚えないよ私!!
「いや、いやいやいやあの、玉藻さん……?ちょっと良いですか?」
コレは流石に抗議しなきゃ、と思い声をかければ卵焼きを口に運んでいた玉藻さんが何ですか?とご飯から視線を上げてくれた。
一連の流れがいちいち綺麗でクソッ!!と思いつつそれでも私はテーブルに並べられた朝食を指差した。
「食に……興味なかったんじゃないんですか?」
「誰も食べないとは言っていませんよ」
ソレに貴女作るって言ったでしょ?と言って綺麗に卵焼きを完食してくれた玉藻さんに、言ったけど貴方興味なさそうだったじゃないですか!!とは言えなかった。
だって……まさかこんな美味しいシチュエーションがやってくるなんて思ってもみなかったんだもん!!
あの女性なら誰でも振り返る様な美男子玉藻さんと、顔合わせて朝食とか!!
あ、でも緊張しすぎてご飯が喉を通らなさそう……。
まぁ、そこは根性で飲み込もう。じゃなくて、取りあえず私もご飯再開させよう……。
「お口に合いますか……?」
「まぁまぁです」
そこはせめてお世辞でも良いから美味しいって言ってほしかったかな!!
伺うようにそう聞けばそう返された言葉に、それでも不味くなくて良かったです…。と言葉を返し私もお味噌汁を啜る。
日本人、やっぱ和食にかぎるよね。うん。
………ホント会話続かないな!
さっきのお口に合いますか?で会話が終了した食卓に、チラリ、と玉藻さんを盗み見ればいつの間にか朝食を全て平らげていた。
早いな!!いや、私がもたもたしてて遅かったのか?!あ、でもこれで帰ってくれるなら良いか、とか思っていれば箸を置いた玉藻さんがご馳走様でした。とご丁寧に手を合わせてくれた。
「あ、いえいえお粗末さまでした」
「お茶をお願いします」
暴君か!!!
思わずダンッ!!と茶碗をテーブルに置きそうになったのをなんとか堪えた私は言われるがままにキッチンへと向かったのだった。

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