お話V

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「さぁ、秀一。お前は自ら責任を取ってアイツに殺されるのだ、ソレで街はすく、われ……」
バサリ、とマントをはためかせナイスタイミングでその場に現れた玉藻さん(妖狐Ver.)と+αに、いやこれ私にとってはバッドタイミングだわ!!とか思いつつ呆けていると向こうも私に気付いたんだろう人化の術の最中で硬直なさった。
「「……………」」
暫く無言で見つめ合う二人。
みつめあーうとー すなーおにー おしゃーべりー でき「見ましたね?」
サザンの「TUNAMI」が流れる私の脳内に、最初に口を開いたのは玉藻さんでそれになにも見てませんっ!!と引きちぎれんばかりに首を振れば何故か小さく鼻息をついた玉藻さんがカメへと向き直ってしまった。
「まぁ、その話は後ほどするとして。まずはこのカメをどうにかしなければ」
そう言って秀一君を小脇に抱えてカメへと歩き出してしまった玉藻さんに死亡フラグが乱立した。
やめて!!そんな事永遠に語り合いたくない!!
ノ―!!と叫びたかったけど私だって命は惜しい。しかも折角生き返ったばかりで寿命は縮めたくないので何も言わないでおいた。
チラリ、と横目で私を見た玉藻さんに、状況が状況じゃなければこの人の流し眼とても素敵!!とか言えてたんだろうけどそんなこと言える状況でもなく、再び空から降ってきた雷に小さく悲鳴が漏れる。
「さぁ、水神よ。白戸秀一はココに居るぞ!!気を沈めたまえ!!」
そう声を上げ高々と秀一君を持ち上げた玉藻さんに、私からカメへと向き直った玉藻さんを見てこれ幸い。とその場から逃げ出そうすればベシャリ、と地面とお友達になった。
あぁ、そういえば足首捻ってたんだ……。痛いよちくしょう……。
なんてタイミング悪いんだ、とか思っていれば玉藻さんに抱えられた秀一君に助けを求められた。
「お、お姉さん玉藻先生の知り合いなんでしょう?!!僕の事助けてくれるように説得してよ!!」
「ゴメンッ!!そのお方とはつい一昨日知り合ったばっかだから無理!!」
そう言って清く謝りなんとかその場から立ち上がる。
それでなくても私にあの玉藻さんを説得できるわけがなかろうが!!逆に頭蓋骨えぐり取られるわ!!
薄情者―!!と叫ぶ秀一君に、大丈夫、君はすぐにあの地獄先生が助けに来てくれるから!!と心の中でエールを送れば本当にその場に地獄先生が現れた。
颯爽と玉藻さんの手から秀一君を助け出した彼はよりにもよって私の目の前に着地を決めてくれた。
あぁ、イケメンとまではいかないけど男前だな、この人も。眉毛さえ普通なら。
「君も早く逃げるんだ!!ココは危険だ!!」
分かってる!!けど足挫いて思うように歩けないんです!!でもあぁ、この状況下で私のことまで心配してくれるとかホントぬ〜べ〜イケメンだ!!しかも置鮎ボイス!ご馳走様!!とか思っていればカメの矛先がこちらに変わったのか物凄い至近距離に雷が落ちた。
「〜〜〜〜っ?!!」
ギャァ、とさえ上がらなかった声にその場に硬直すればぬ〜べ〜に小脇に抱えられ少し離れたところに降ろされた。
「さぁ、逃げるんだ……!!」
そう言ってカメへと駆けだしたぬ〜べ〜はさながら王子様だった。
あぁ、コレでゆきめさんとゴールインしなければ私は貴方一択で猛アプローチかけてたのに……。
あ、そんなこと考えてる場合じゃない!!本格的にバトルが始まる前にココから逃げ出さなくては!!
あのカメがやられたら次は私が『無に還れー!!』って殺られる番だ……きっと!!
カメに殺されるか玉藻さんに殺されるかの違いで私のフラグは折れる気がしない……!!
生き返って一週間足らずで第二の人生終了とか冗談じゃない!!
そう思いながら私は痛む足を引きずってその場を離脱した。

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