お話V

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「あの……どう、されたんですか?」
「ちょっとお伺いしたいことがありまして」
そう言って立ち話もなんですので、とズカズカと家に上がり込んできたお隣さんに思わずへ?!と声を上げていた。
確かに引っ越してきたばっかで家の中は綺麗だけども!!普通女の人の家にそうズカズカと上がりますか?!あ、いや……この人一般常識知らないのか……?
「ちょ、あの……た、玉藻さん……?!」
「あぁ、いなり寿司ご馳走様でした」
美味しかったですよ、とリビングまでやってきてやっと私を振り返った玉藻さんに、あぁ、アレちゃんと食べたのか、流石狐だな。とか思っていればリビングのテーブルの上に並べられていた夕飯を見て何故か玉藻さんがフ、と鼻で笑った。
え、鼻で笑うってなんですか?せめてそこは口で笑……われても嫌だな……。
「とても家庭的な夕飯ですね」
「えぇ、ありがとうございます」
何が言いたい。
質素だと言いたいのか?それともババ臭いとでも言いたいのか……?
そう言ってソファーへと腰掛けた玉藻さんに、え?この人遠慮というものを知らないのか?とか言いたかったがどこで地雷を踏むか分からなかったので言葉を呑みこみ食べかけだった夕飯を片付け始める。
肉じゃがにほうれん草のおひたし、焼き魚とジャコと大根の和え物を片付けつつ(あぁ、言われてみればホント家庭的☆)リビングのソファーで寛ぐ玉藻さんを盗み見る。
あぁ、ホントイケメンだなこんちくしょう!!じゃなく……この人何しに来たんだ……?
あ、とりあえずまずはお茶か。
………この人に湯呑差し出したところで笑いしか起きないな。
湯呑を持つ玉藻さんを想像して、いやぁないない。と一人笑っていればお話よろしいですか?とリビングから声をかけられた。
ソレに慌てて食器棚からマグカップを取り出してインスタントの珈琲を淹れた私はソレを手に玉藻さんの元まで戻ってくる。
「よければ、どうぞ……」
「あぁ、すいません」
いただきます、と差し出されたソレを受け取った玉藻さんに、カーペットの上へと座れば(だって流石にこの人の隣には座れない)珈琲を一口飲んだ玉藻さんが不意に私へと視線を向けた。
バチリ、と合った視線に慌てて目を逸らせば、引越しの挨拶なんですが、と唐突に口を開いた玉藻さん。

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