お話V

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結局次の日になっても同じ部屋で目を覚ました私はあぁ、コレが全て夢だったら良かったのにな、と自嘲した。
つい昨日死の淵から生還したはずなのに、余命1年を何処にいるかも分からない神様に宣告されて、選択できるキャラクターが乏しすぎるこの世界でどう生きろと……?
そもそも主人公は雪女さんとゴールインするからダメだとして、あと男性キャラクターなんて……なんて……あれ?ほぼ妖怪で埋め尽くされてる気がするよ??
なまはげ然りヤマコ然り、人間界で人間に扮して生きてる妖怪その他多数。
流石に5年3組の生徒に手を出したらそれこそちょっとお姉さん署まで来てくれる?ってなるだろうし……。
だからって、だからって……流石に玉藻京介はハードル高いよ?神様
顔良し頭良し運動神経良しの非の打ちどころがないんじゃないかってぐらい完璧で女性からの人気も申し分ない彼も妖怪なんですよ……?
え?どうあがいても妖怪としかゴールイン出来ない気がするのは気のせいだろうか……?
あ、でも中国の霊符師のヤンさんだったかって人がいるか……。ちょっと待て……その人いつ登場するんだよ……?!だいたい今話どこまで進んでるの?!
ホント勘弁してほしい……、こうなりゃその他大多数いるモブキャラと恋でもしようか。うん、ソレが良い。名案名案!と一人頷いて夕飯の肉じゃがをつつく。
何もないと思っていた部屋は案外色々揃っていて冷蔵庫にも食材がドッチャリ入っていた。
なんかもう適当に詰めとけば良いか、感がいなめないけどこの際文句は言わない。
買い物行く手間も省けたし今日一日は家に居たい。
外に出てすぐ妖怪に襲われました、なんて笑い話にもならない。
これからどうしようかなぁ、とか考えながら肉じゃがを頬張っていれば部屋に響いたチャイムの音。
ピンポーンと鳴ったチャイムに郵便かな、とか思いつつ箸を置いて玄関へと向かう。
「ふぁーい」
「こんばんは」
「ンブッ……?!!」
モグモグとジャガイモを咀嚼しながら扉を開ければそこにはお隣の妖狐さんが立っていた。
思わぬ来客に、喉に詰まったジャガイモを慌てて胸を叩いて飲み込めば大丈夫ですか…?とどこか呆れたように玉藻さんの声が降ってきた。
ソレに大丈夫だと意思表示するように手を上げればそうですか、と声を漏らした玉藻さん。
表面上は一応気遣ってくれるているであろう彼にやっと呼吸の落ち着いた私は突然やってきた玉藻さんを見上げ……直視できないなこの顔。
見れなかったのでちょっと彼の胸元辺りに視線を向けた。

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