お話V

□キースT
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『ありがとう!そしてありがとう!皆さんの声援のおかげです!』

拍手喝采を浴びるスカイハイを横目にチラリと壁にかけてある時計を見やる。
時刻はもう8時過ぎ
そろそろお腹空いたなぁ、と思いながらちょっと冷めてしまった夕飯へと視線を向ける。
インタビューに答えるスカイハイはまさにKOHの名に相応しい立ち振舞いで感心してしまう。
もう一度お決まりの決め台詞を言ったスカイハイに、TVカメラがパッと第2位のバーナビーへと切り替わる。
司会の言葉に一言一言にこやかに答えて行くバーナビーを見やり、足元で寝息を立てる彼の愛犬へと視線を落とす。
さっきまでひたすらに遊んでいたから疲れたんだろう
そんな彼の頭をゆるりと撫でてやり違う番組へと切り替わったTVを見て冷めてしまった夕飯を温めるべくソファーから立ちあがった。





チキンにビーフシチューにサラダにケーキ、とクリスマスさながらな夕飯に、グルルと鳴ったお腹を押さえもう一度時計を見やる。
時刻は夜の9時を回っていて、もう一人で先に食べてしまおうか、と溜息を吐きだせばテーブルに置きっぱなしにしていた携帯が震えた。
それを手に取りメールを開けば今まで何の連絡もなかった彼からこれから急いで帰るよ!と言う内容のメールが来ていた。
それに了解、とだけ返事を返してソファに座りこめばピンポーンと、庶民的なチャイムの音が部屋に響いた。
それに今しがた座ったばかりなのに、と悪態をつきつつ時計を見やる。
さっきのメールから5分と経っていないからきっと宅配かなんかだろう。
「ハイハイハイ、今出ますよー、っと」
もう一度鳴らされたチャイムに返事をしてソファーから立ち上がる。
「どちら様で……うわぁっ?!」
扉を開けながら顔を上げれば目の前に真っ白な花束が現れた。
それにビックリしていればただいま!と元気な声が聞こえてくる。
「キース……、随分と、早いわね」
抱える様に持たれた花束の向こうからにこやかに顔を覗かせたキースを見て、もう一度時計を見る。
急ぐにしても異様に早いお帰りだ……。
確かジャスティスタワーからココまで車で飛ばしても15分はかかる
そう言った私に部屋へと上がったキースは手にしていた花束と沢山のプレゼントをテーブルへと置くと満面の笑みで私を振り返った。
「君を待たせてしまっては申し訳ないと思ってね!飛んで帰ってきたんだ!」
そう言ってさぁ!と両手を広げたキースの頭はきっと強風に煽られたせいだろう、ボサボサだった。
ニコニコと、いつものように笑みを浮かべるキースの格好は、スカイハイのヒーロースーツのままだった。
きっと、文字通り『飛んで』帰ってきたんだろう……
「ねぇ……キース?貴方一応KOHよ?」
「そうだね!今年はなんとかバーナビー君に抜かれずにすんだよ!」
良かった!と笑った彼に溜息を吐きだす。
この子、本当に自分がスカイハイだってこと隠す気あるのかな……?
ニコニコと満面の笑みを浮かべるキースに怒る気も失せて溜息を吐きだせば待ち切れなかったんだろう私の元へとやってきたキースはそのまま私をギュッと抱きしめた。
「ただいま!私のインタビューはどうだっただろう?おかしな所はなかったかい?」
「はいはい、お帰りなさいヒーロー。大丈夫よ、とってもキマってたわ」
そう言ってポンポン、とキースの背中を叩けばそれは良かったよ!と声を弾ませたキースがグリグリと私の頭に頬をすり寄せた。
「ほら、お腹空いたでしょ?ちゃんとリクエスト通りに作ったから、着替えてらっしゃい」
「豪華だね!とても豪華だ!君がご飯を作って待っていてくれてると思って、何も食べてこなかったからお腹がペコペコだ、そしてペコペコだよ!」
そう言ってやっと離れたキースはジョンを連れていそいそとベッドルームへと向かった。
そんな彼を見送って、冷蔵庫からシャンパンを取り出した私はそれをワイングラスへと注ぎ、テーブルへとついた。





「それにしても、毎回毎回凄いプレゼントの数ね」
「あぁ、ファンの子達がお祝いにとくれたんだ!」
夕飯を食べ終わってソファーで寛ぐキースを見やり、テーブルの上の大量のプレゼントを見やる。
そう言った私に酷く嬉しそうに笑みを浮かべたキースはその中のテディベアを手に取ると両手をクイクイと上げ、スカイハイのポーズをとってみせた。
「『いつも応援してます』と言われたよ。彼女達の声援にこれからも答えていきたいね。是非
今年は100pt差でなんとか首位を取ることができたけれど、来年も取れるとは限らない。だからこれからも頑張っていかなければね、うん、頑張らないと」
そう言って口元に笑みを浮かべテディベアを見つめるキースを見て、そんな彼の横に腰かける。
彼の手の中のテディベアの頭をゆるりと撫でた私に、テディベアから視線を上げたキースはやっぱり笑みを浮かべていて、合わさった視線にそのまま彼の頭をクシャリと撫でつけた。
「別に、私はどちらでも構わないわ。『キング』だろうと『風の魔術師』だろうと……
ランクが下がってもスカイハイはスカイハイよ?貴方の存在は消えたりしないんだから
私は何時だって一番に貴方を応援するわ」
それにヒーローは人を助けるのが仕事でしょ?と笑えば少し驚いたような顔をしたキースがふにゃりと破顔した。
「そうだね……、そうだった!私は困っている人を助けたくて、ヒーローをやっているんだ
順位やポイントなんて気にすることではなかったよ、私は『スカイハイ』として人を助けられればそれで良いのさ……!」
大事なことを忘れていたよ、と小さく苦笑したキースはありがとう!と笑みを浮かべるとそのまま私を抱きしめてソファーに倒れ込んだ。
「ちょ、っと……!重いよ……キース!」
「ありがとう、とても嬉しいよ、とても!君の言葉が、いつだって私に元気をくれる。
君が居てくれるだけで、私はいつだって『スカイハイ』として頑張れるのさ!」
大好きだよ!とグリグリと押し付けられる顔に、苦笑を漏らしてそんな彼の頭を撫でつける。
暫くそんなキースの頭をゆるゆると撫でていればふふ、と楽しげに笑みを零したキースは、そのままの姿勢で眠りに落ちてしまった。
「お疲れ様、ヒーロー。良い夢を」
ソッと彼の下から脱け出して楽しげに笑みを浮かべるキースに毛布をかければ、彼の足もとに座っていたジョンが小さくウォン!と鳴いた
眠りについたご主人を見て、自分も寝なければと思ったのだろうそのままゲージへと入っていた頭の良い愛犬を見やり、私も隣のソファーへと寝転んだのだった。



It's ale for you who exert themselves.


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