そして君に恋をする

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教室について指定された席に着けば木手君に遅いと言われわっさん、と返す。
「………少しは覚えたようですね」
それって褒めてくれてるのかな?
そう言ってメガネのフレームを押し上げた木手君にそんなことを思いながらうん、と返す。
先生はまだ来てないみたいで教科書を開きながらそういえば、と思い出したように木手君を振り返る。
「木手君、ちょっと質問良いかな?」
「何ですか」
「『イキガ』って標準語でなんて言うの?」
そう聞いた私に木手君は暫く無言で私を見たあと、『あぁイキガァですか…』と白々しく言葉を返してきた。
「そうですね、一般的には『男』をさす言葉でしょうよ。ちなみに『イナグゥ』は女ですね」
分かりやすく説明してくれた木手君にそうなんだ、と返せば再び木手君から視線が返ってきた。
「まぁ、表現によっては『彼氏』や『彼女』になったりもしますがね」
どうせ甲斐君に聞かれたんでしょう。なんて言われて良く分かったねと返したら分からないほうがおかしいんですがね、と返されてしまった。
なんだその呆れたような視線は……。
『彼氏』か……。
国光がねぇ……。
それはないな。なんて一人で笑っていると木手君から怪訝な目で見られてしまった。
「なんか、さ……。今更な気がするんだけど初日と昨日はごめんね……」
「……本当に今更ですがね。」
そう言って謝ればハァ、と盛大に溜息をついてくれた木手君に、また抗議の声を上げそうになり慌ててグッと口を引き結んだ。
そんな私を見て許しますよ、と言って教科書を開いた木手君に、なんだ、私が全面的に悪いのか?なんて思ってしまったがここで何かを言ったらきりがないので渋々アリガトウ、と返しておいた。

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