そして君に恋をする

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テーブルについて用意されていた朝食を食べる。
最近は洋食に拘っているらしく朝からパンと牛乳にスクランブルエッグな朝食に、お腹にたまる物が良いなぁ、なんて贅沢な事を思っていればヒョコリ、と母さんがリビングに顔を覗かせた。
「楓ー?」
「なに?」
「お友達迎えに来てるわよ」
「……………は?」
さも当たり前のようにそう言った母親に食べかけのパンをポロリ、と口から落とす。
ちょっと待て、私にはまだ友達なんて一人もできてない、あ……なんか寂しい子みたいだ……。
「母さん」
「何よ」
「私友達いないよ」
そんな母へとそう言葉を返した私に、母さんは凄くショックを受けた顔をすると玄関と私を交互に見やった。
なんだ、その『自分の子ながら可哀想』みたいな目は……!!
「その『オレオレ詐欺』ならぬ『トモトモ詐欺』の子に私は腹痛で死にましたって言っといて」
「何言ってだしよぉ、せっかく迎えに来たんばぁ」
そう言って再び食事を続けようとしたら、ここ2日ぐらいよく見た顔がリビングに現れた。
ので、飲みかけだった牛乳を思わず噴出しそうになってしまった。
それを何とか飲み込んでリビングの入り口に立っている甲斐君を見る。
「ハイサイ!!」
「…………ちょっ、お母さぁん!?知らない男の子勝手に家に上げちゃ駄目でしょ‼?」
そう片手を上げて元気に挨拶した甲斐君に思わずお母さんへとそう叫ぶ。
「クラスメイトなんですって?もう仲良くなるなんて良かったわねぇ」
わざわざありがとうね、なんて甲斐君に外向きようの笑みを浮かべ奥へと行ってしまう母親。
早く食べちゃいなさいよ、とかけられた声に、遠ざかる母の背を見送りこちらへとやってきた甲斐君へと視線を向ける。
「知らねぇとか言うなよ傷つくさぁ」
そう言って勝手に椅子を引いて座る甲斐君。
昨日の怪我は大したことないらしく昨日より少し小さめの包帯が巻かれているだけだった。
「な、なんで家が分かったの……?」
「わんのヤー正面なんさぁ」
そう言ってリビングの窓から見える正面の家を指差した甲斐君に、あぁ…そういえばお向かいさん表札に『甲斐』って書いてあったような気もするなぁ…なんて事を思い出す。
やっばい、まさかご近所さんだったなんて……
「うりー、急ぐさぁ遅刻するぞー」
そう言っていやに上機嫌の甲斐君にバシバシと背中を叩かれ、それにあぁ、うん!と返して慌ててご飯をかきこんだ。
食べ終わったご飯にご馳走様でした!と手を合わせ、鞄とテニスバッグを持つと母さんにいってきまーす!とひと声かけた私は甲斐君と一緒に家を出たのだった。

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