灰色世界

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ザァザァと降り続く雨に、排水溝へと流されていく真っ赤な血
息を引き取ってもう幾分か経つであろう彼女の姿に、そのお腹には大きな穴が開いていて……周りには、誰も居なかった。
ただ、伏せられた瞼と胸元で揃えられた両手が今までソコに『誰か』が居た確かな証拠で、私はギリ…と奥歯を噛み締めた。

 ――錦は甘えん坊だからさ……、もしも私が居なくなったら錦のこと頼むね、久遠……

「姉貴の体ほっぽって何処行きやがった……クソニシキ……!!」
不意に脳裏に過ったいつかの約束に、ザァザァと、雨に打たれ眠る彼女の顔はあの時と同じでどこか幸せそうで……
聞こえてきた複数の足音に、彼女の体をシーツに包んだ私は重たいその体を持ち上げるとその身を隠すようにその場をあとにした。

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