灰色世界

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 ――――プルプルプル……プルプルプルプル
仕事中突然鳴った携帯電話に、マズイッ…!と思っていれば上司にマナーモードぐらいしておけ!!とやっぱり怒られた。
納期が迫っていて苛立っている上司にすいませーん!と謝り電話を切るべく携帯を取り出せば、通知画面に『ニシキ』の三文字が表示されていた。
いっけね!!最近あまりにも平和すぎてあの子の存在忘れてたっ……!!!
ヤバいよヤバいよっ?!!今このタイミングで錦君から電話があるって事はきっと月山襲撃事件に関わって来る内容だよな?!!
これ出たら確実巻き込まれるパターンだよな?!!
切った方がいいのか?!!いやそれじゃぁあまりにも酷いだろ?!!
一向に鳴り止まない電話にどうしよう、どうしよう?!!と悩んでいればさっさと出るか切るかしろっ!!と再び上司に怒られた私はちょっと出てきますっ!!とイスから立ち上がるとオフィスを後にした。




 −ピッ
「も、もしもし錦君どうしたの……?」
『あぁ、良かった出てくれたっ……!!』
「ぇ……?」
てっきり受話器の向こうから聞こえてくるのは弱り切った錦君の声だと思っていたのに、聞こえてきたのは女の人の声で、思わず呆けてしまった。
『久遠さん、私です!西野貴未です!』
「ぁ、あぁ……貴未ちゃんかビックリした。どうしたの……?」
そう名乗ってくれた貴未ちゃんにやっと状況を理解してそう言葉を返せば、助けてくださいっ…!!なんてひどく焦ったような貴未ちゃんの声が受話器の向こうから聞こえてきた。
『に、ニシキ君がっ……!!ニシキ君が死んじゃうかもしれないっ……!!』
「お、落ち着いて貴未ちゃん!取りあえずすぐ行くから貴未ちゃんは絶対ソコ動かないでねっ!!?」
きっと泣いているんだろう彼女に、何故彼女が金木君ではなく私を頼ってきたのかはさておいて、錦宅にいるのであろう貴未ちゃんにそう声をかけた私は通話を切るとオフィスへと駆けだした。

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