灰色世界

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「あったわよウ―さん」
「ありがと、イトリさん。それで、久遠さんってどんな子?」
「んー?それがだねぇ、ちょぉっと面白い情報があったのだよ」
そう言って至極楽しげにその顔を綻ばせたイトリに、イトリさんがこんな顔をするのも珍しいな、とそんなイトリを見やり目を瞬かせたウタはどんなの?とそんなイトリに先を促した。
「『神崎久遠』に関する情報で分かってんのは取りあえず性別と血液型、あと年齢。26歳だってよ、私らとそんな変わんないわね。ん・で!その中でも特にその『久遠ちゃん』に関して面白い事があってだね、なんと彼女………
あの『西尾錦』の昔馴染みらしいわ」
「西尾錦って……あの一匹狼してるニシキ君?」
「そー!あの勉強家の西尾錦!しかもどうやらその錦、その子に正体までバラしてるそうじゃん」
そう言ってピラピラと手にしていた紙を振ったイトリに、そんなイトリの手からその紙を受け取ったウタは久遠の写真が載っているソレへと視線を落とすと再びパチリ、と目を瞬かせた。
先程会った女性のその顔写真に、その横に書かれる彼女に関しての全ての情報へと目を通したウタは『西尾錦と深い関係有り』と書かれているソレを見やるとどこか納得したようにあぁ…と声を漏らし手にしていた紙をイトリへと返した。
「そっか。だから僕が喰種だって知っても驚かなかったんだね、彼女」
「つーかだよ?あの錦に人間の幼馴染が居たって事に驚きだよ、私は。しかも正体までバラしてるっつーんだから……ちょっと、危険なんじゃないだろうかね、その子」
「どうだろう。今のところ、そこまで危険視するほどの子でもないと思うよ、僕は」
そう言ってグラスに口をつけたウタに、人間に正体が知られる事をそれほどまで危険視していない目の前の同胞を呆れたように見やったイトリは、テーブルに置かれるパーカーを何処かぼんやりと眺めるウタにまたふと、その口元に弧をかいた。
「会いに行ってみりゃ良いじゃないの、その『久遠』ちゃんに。気になってんでしょ?ウーさん」
「んー……、きっかけがないと行けないかな。急に会いに行って警戒されても嫌だし」
そう言ってハハ、と笑ったウタに珍しく慎重だな、とそんなウタを見て目を瞬かせていたイトリは、不意にカラン、と開いた扉にそんなウタから店の扉へと視線を向けると、珍しい訪問者を見てまた楽しげにその口元に弧を描いた。
「ほれ、ウーさん。『きっかけ』が来たよ」
「こんにちは、イトリちゃんウタ君。貴方達に折り入ってお願いがあるのだけれど、良いかしら?」
「はい、こんにちはリョーコさん。どうぞ、座ってください」
そう言って遠慮気味に自分達へと声をかけた笛口リョーコに、そんなリョーコを見やったウタはゆるり、とその口元に弧をかくとイスへとリョーコを促したのだった。


ココロ惹かれる


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