灰色世界

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カランカラン、と来客を知らせるベルの音と共にお店へとやってきた旧友に、珍しくも夕方にお店へと顔を覗かせたウタを見やったイトリはキョトリ、と目を瞬かせると楽しげにその口元に弧を描いた。
「やぁやぁウーさん、珍しいねこんな時間帯に来るなんて」
「うん、ちょっとね。イトリさんに試作品のマスク持って来たのと、ネタ提供」
どうした?と楽しげにかけられ声に、カウンターへと腰掛けたウタはリュックの中に入れていたマスクとパーカーを取り出すとソレ等をテーブルへと置いた。
時折こうして試作品を店へと持ってくるウタに、今回はまた随分と恐怖を煽るマスクだな、とソレを見ていたイトリはその隣に置かれた見覚えのないパーカーを見やるとキョトリと目を瞬かせた。
「ネタって、なんか良いモンでも見つけたのかね?」
「うん。あぁ、なにか飲み物ちょうだい」
久しぶりに動いたから疲れちゃった、とどこか楽しげにその口元に弧を描いたウタに、また目を瞬かせたイトリは取りあえず、とそんなウタへと飲み物を提供するべくグラスを手に取ったのだった。

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