灰色世界

□3
1ページ/4ページ

西尾錦との重大な関係性を(勝手に)築いていた事が発覚し早一ヶ月
私は今、そんな彼と2度目の買い物に来ていた。
え?なんでかって?そんなの私が聞きたいよ!!!
突然彼から『参考書選び手伝ってくれ〜』ってLINEが送られて来た時は心底驚いた……!!!
まさかLINE交換してる仲だなんて思わなかったんだもん!!
いや、違うか………『幼馴染』なんだから連絡先ぐらい知っていて当然……
って事はだよ?もしかしてコイツ私の家の場所も知ってんじゃね………?
少しづつ確立していく死亡フラグに、これ以上はもうホント関わりたくないのに……と思いつつそんな『錦君』の隣を歩く。
呼び方を変えたのはついさっき。
これ以上変に思われたら流石にマズイ。
この前も『急用が出来たから帰るねっ……!!』って逃げるように帰っちゃったからな……。
「なぁ、久遠さんってよ、どの参考書使ってたんだ……?」
「ぇ……?もうさ、現役卒業して何年経ってると思ってんの……?覚えてるわけないじゃん」
そう言って数ある参考書のいくつかを手にとってパラパラと捲る錦君に、ハハハ、と笑えばだよなぁ、なんて返して手にしていた参考書を棚へと戻した彼。
何使ってたもなにも………私人生の中で一度たりともこんな分厚い参考書買ったことないんですけどね……!!!
「だいたいさ、君と私じゃ学部も違うでしょ?私の意見なんて参考にならないと思うんだけど」
「あー、アンタ経済学部だったもんな。勤めてる所も一流企業だろ?」
流石だねぇ、なんて笑った錦君に、へぇ私経済学部なんてところに入ってたんだ、とか思いつつそんな錦君にまぁね、と返していくつかの参考書を手に取る。
「錦君薬学部だったっけ?だったらこの辺が一番使いやすいんじゃない?」
「あ〜……コッチのは持ってんな。じゃぁコレでも買っとくか……」
そう言って青色の表紙の参考書をいくつか錦君に見せればその中の一冊を持っていく彼。
コイツが薬学部だってことは原作でも触れてたから覚えたんだよな、ホント助かった……!!
昨日必死こいて『薬学部 参考書』で調べた甲斐があったよ!!!不審がられてはいないだろ?!
「将来は薬剤師ですか?錦さん」
「んー?まだ決めてねぇ。まぁ良いとこに就けりゃソレで良いんじゃね?」
安定した生活してぇからな、と参考書を手にレジへと向かう錦君の隣をついていきつつそう声をかければハハ、と笑った錦君。
自ら進んで『人間の世界』で暮らす喰種もなかなかいないらしく、その中でもこの『西尾錦』と『霧嶋董香』は別格のようだ。
人間の世界で、人間と共に学を学び、そして人間の友人や恋人を作っているのだ。
その首にはいつだって首吊り縄が引っ掛かっているようなものなのに、それでも……彼らは自分から、人と生きる道を選ぶのだ。
「まぁ、困ったことがあったらなんでも相談してよ。私は錦のお姉さん代わりなんだから」
「………サンキュ……」
喰種って大変だな、なんて思ったら自然と口をついて出てしまったその言葉にヤベェ…と言ってしまったあとで口を押さえる。
今私自分から死亡フラグ立てにいったんじゃないか……?
だから私のできる範囲でね!!と言おうとしたのに、錦君がどこか少しだけ寂しそうに笑ったものだから、もう何も言えなくなってしまった……。
そんな顔するなよ……君には、まだ君を大切に想ってくれている貴未ちゃん(恋人)が居るんだから。
この先の展開まで知っている私にとっては少しだけ辛いその出来事に、頑張れ受験生!と気を紛らわせるように錦君の背を叩けば考えねぇようにしてたのによ、クソ…、と今度は嫌そうに眉を顰められた。

次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ