灰色世界

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いつものようにPCと睨めっこをしつつ作業をこなしていればついていたTVから『速報』を知らせる音楽が流れてきた。
それにガヤガヤと少し煩かったオフィスが静まったことに作業の手を止めて私もTV画面へと視線を向ける。

『ただいま速報が入りました。本日午後8時、20区にある文月グランドホテルの44階で都議会議員の国成戒さんが遺体で発見されました。
国成さんは鋭利な刃物で心臓を突かれ即死状態で、彼の局部が現場から持ち去られていることから犯人は『喰種』である可能性が高いとされています。また情報が入り次第お知らせします。続いてのニュースです………』

そう原稿を読み上げるニュースキャスターに、文月グランドホテルとか私の家の近くじゃん…とか思ったけれど、それより何よりまず私はそのニュースキャスターの最後の言葉にン…?と首を傾げてしまった。
「………『ぐーる』?」
どこぞで聞いたことのあるその単語に、アレおかしいな私の聞き間違いかな?と思いねぇ、と隣で携帯片手に仕事をする同僚へと声をかける。
「今あのニュースキャスター『喰種』って言わなかった……?」
「あぁ、最近多いよね喰種被害。アンタ20区に住んでんだから十分気をつけなさいよ」
そう言ってまた携帯に視線を落としてしまった同僚に、ちょっと待って私が住んでるのは『練馬区』であって決して『20区』なんて場所じゃないよ?!とか思いつつ再びモニターを見上げる。
別のニュースに移ったソレに、画面下に小さく『都議会議員の国成戒さんが喰種に殺害されました』と流れるテロップを見て、アレ…?と声を漏らしてしまう。
ちょっと……待とうよ……。
『喰種』って……あの某青年雑誌に掲載されてる『東京喰種』に出てくる架空の種族のことなんじゃないの……?
あれ?いつの間に私たちの世界にまで『喰種』が出没するようになったの……?と混乱をきたす頭でどうにか状況を理解しようと情報をまとめていればふと、さっきの同僚の言葉が頭を過る。
そういやコイツさっき『アンタ20区に住んでんだから』とか……言わなかったか……?
私の記憶が間違っていなければ私の住んでいる所は『練馬区』で、今私が居るこの会社は『中野区』のはずだ。
「ね、ねぇ……此処ってさ『中野区』だったよね?」
「は?何処よソコ。此処は『14区』だよ。残業のしすぎで頭おかしくなったの?」
ちょっと休憩したら?なんて憐れむ視線を私へと送ってきた同僚に頭はすこぶる冴えてるわ、と返したくなるのをグッと堪えて恐る恐る携帯を取り出す。
YAHUUニュースのトップにも載っているその議員のニュースに、検索ワードに『東京喰種』と入力して祈る気持ちで虫眼鏡マークをポチリ、と押した私は次いで表示された『東京での喰種による年間の被害者数』の見出しを見て愕然とする。
頭に過った最悪のifにそんなそんなまさかね…、と小さく首を振り今度は検索ワードに『金木研 喰種』と入力して検索をかけた私は『検索結果0件』と表示されたソレにポロリ…、と手から携帯を落とした。

どうやら私は、自分で気付かないうちに『東京喰種』の世界に迷い込んでいたらしい――――


ようこそ混沌の世界へ


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