純愛讃歌

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「え……?ピッコロさんの、苦手な物、ですか……?」
ブラックサンダーと二人で組み手をしていた悟飯はそう言ってどこか期待の眼差しを自分へと向けたブラックサンダーに、う〜ん、と困ったように声を漏らした。
「悟飯君、ピッコロさんと長いこと一緒にいるんでしょ?あの人の弱点とか知らないの?」
そう言って自分に詰め寄ったブラックサンダーに、弱点…と声を漏らした悟飯は随分と前に地球を襲ってきた超ナメック星人のことを思い出した。
確かあの時初めてピッコロさんの苦手な物を知ったんだよな、と懐かしさに浸っていた悟飯は聞いてる?と肩を揺すったブラックサンダーに、視線をブラックサンダーへと戻した。
「また……何で急にそんなこと聞くんですか?」
「そんなのあのグリーンメンの弱みを握るために決まってるじゃん!!」
ひどく期待した表情で自分を見やるブラックサンダーに、そんなブラックサンダーから視線を逸らした悟飯はハハハ、と苦笑を洩らした。
「ブラックサンダーちゃんって、そう言うところ全然変わりませんね」
ピッコロさんに怒られますよ、と武道の腕は格段に上がったのに昔と全然変わらないブラックサンダーのその性格に悟飯はそう言うと組み手をやめ歩き出してしまう。
「えー、悟飯君はないのー?ピッコロさんにひと泡吹かせようとか」
「ないですよ、だいたいブラックサンダーちゃんだけ1年半もピッコロさんと二人で修行してズルイじゃないですか」
そう言ってどこか不貞腐れた表情を浮かべた悟飯に、その隣を歩きだしたブラックサンダーは苦笑を洩らした。
自分達が森から帰ってきてから悟飯は前にも増してピッコロにひっついて回る様になっていた。
ピッコロもピッコロで慕われることに嫌な気はしないのかそんな悟飯にまんざらでもない様子だった。
「ホント、悟飯君ってピッコロさん大好きだよね」
「ブラックサンダーちゃんは好きじゃないんですか?」
どこか呆れたようにそう零したブラックサンダーに、不思議そうに首をかしげそう言った悟飯は隣を歩くブラックサンダーを見やった。
ソレに声を詰まらせたブラックサンダーは思わず悟飯から視線を逸らす。
「き、嫌いでは……ない、よ」
「ピッコロさんは厳しい人ですけど、優しいですよ」
とっても、と歯切れの悪い言い方をしたブラックサンダーに、それでもそんなブラックサンダーを見て嬉しそうにそう言った悟飯に、ブラックサンダーも小さく頷いた。
「沢山、お世話になった……」
修行中、と小さく声を漏らしたブラックサンダーにふふ、と楽しげに笑みを浮かべた悟飯は見えてきた家にブラックサンダーを振り返った。
「ブラックサンダーちゃんもたまには素直に気持ち伝えたらどうですか?」
きっと喜びますよ、ピッコロさん!と声を弾ませた悟飯は手を振るチチを見やると駆けだした。
それに遠ざかる悟飯の背を見やったブラックサンダーは眉を顰めると小さく溜息を吐きだした。
「君の『好き』と私の『好き』じゃ意味が違うんだよ……」
そんな素直に言えるか、と声を漏らしたブラックサンダーは呼ばれた名前に小さく苦笑を洩らすとチチへと手を振った。

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