純愛讃歌

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「ねー、シショー……お腹痛い……」
「その程度で済んでいるのだから有り難く思え」
夕方の組み手を終えたブラックサンダーは終始痛みを訴えていたお腹に、溜息を吐きだすとピッコロの背へと凭れかかった。
ギュルル、と鳴ったお腹に再びお腹痛い、と声を漏らしたブラックサンダーにピッコロは顔色の悪いブラックサンダーを見やると小さく溜息を吐きだした。
「世話の焼けるガキめ……」
そこで待っていろ、と言って空へと浮かび上がったピッコロに、凭れていた壁が無くなったブラックサンダーはペシャリ、と地面に転げるとそのままどこかへ飛んでいったピッコロを仰ぎ見た。
「なんだろ……?」
そのままゴロリと地面を転がり近くの川縁までやってきたブラックサンダーはヨイショ、と岩場に腰を下ろすと深々と溜息を吐きだした。
ゆるゆると痛みを訴えるお腹に、う゛〜ん、と声を漏らしたブラックサンダーは川の水を手に掬うとソレを口元へと運ぶ。
「そこの水は飲めんぞ」
「グェッ……」
そう言ってグィ、と襟首を引っ張ったピッコロに手の中の水を零したブラックサンダーはいつの間にか戻ってきていたピッコロを仰ぎ見た。
「こんな綺麗なのに……?」
「有害物質が多く含まれているからな。飲めたもんじゃない」
そう言って顔をしかめたピッコロに、小川へと視線を落としたブラックサンダーはそう言えば魚が全然泳いでない、と声を漏らすと再びピッコロを仰ぎ見た。
「解毒作用がある、これでも齧ってろ」
そう言って草をブラックサンダーへと差し出したピッコロに、ブラックサンダーはソレを受け取るとピッコロを仰ぎ見てその顔に笑みを浮かべた。
「ピコさんって、なんだかんだ言いつつ優しいよね」
たまぁにだけど、と笑ったブラックサンダーはその草を口へと入れると苦っ、と声を漏らした。
「貴様がそれではろくに修行もできんからな」
顔をしかめ草を齧るブラックサンダーに、小さく舌打ちを零したピッコロはそう言うとブラックサンダーの頭を軽く小突いて懐から竹筒を取り出した。
なんとか草を飲み込んだブラックサンダーはそれを投げて寄こしたピッコロを見やるとふふふー、とそれでも嬉しそうに顔に笑みを浮かべる。
「私、ピッコロさんのそういうところ好き」
修行は厳しいけどね、と声を漏らしたブラックサンダーに、ひどく嬉しそうに笑ったブラックサンダーを見やったピッコロは声を詰まらせるとそんなブラックサンダーから顔を背けた。




不器用に優しく


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