千年歌

□14
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ガヤガヤと賑やかな教室に、広達と机を合わせて給食を食べていた紫苑はソッと鵺野の机へとパック牛乳を差し出した。
「おいおい、紫苑。お前また残すのか……?」
「私、小食だから」
そう呆れたように紫苑を見やった鵺野はパンを半分ちぎって広の皿へと乗せた紫苑に、喜ぶ広を見やると紫苑のフルーツポンチに手を伸ばす克也の手をパシリと叩いた。
「良いか紫苑、お前は育ちざかりなんだからもっと食べなきゃいかんぞ!」
ほら、先生を見習って!と言ってバクリ!とパンに齧りついた鵺野に、ちゃんと食べてますよ。と言いつつ克也の机にフルーツポンチのお皿を置いた紫苑は唯一自分の机に残った半切れのパンをちぎって口へと運んだ。
ソレにやれやれ…、と自分を見やり肩をすくめた鵺野に、極端に食に頓着のない紫苑は、鵺野の『育ち盛り』と言う発言にクックッ、と肩を震わせる広と郷子を横目に見やるとねぇねぇ!と上がった声に、それまで本を片手にご飯を食べていた美樹へと視線を向けた。
「紫苑ちゃんはやり直したい過去とかあるの?」
「やり直したい過去……?」
さきほどまで話していた『チャブクロ』の話に、私は峰竜太のサインをもらっておけば…、と残念がる郷子に、ギザ付きの10円玉…と悔やむ広を見やった紫苑は本を手にする美樹へと視線を戻した。
どこか期待する視線を向ける美樹に、興味があるのか自分へと集まった視線を見やった紫苑はふ、とその口元に笑みを浮かべるとパクリ、とパンを一切れ口へと放り込んだ。
「やり直したい過去なんて、数え切れないほどあるよ。でもそんなの上げてたらキリがない。過去の失敗を教訓に、未来を生きて行かなきゃ、人間は何時まで経っても成長できないよ」
そう言ってふふ、と笑った紫苑に説法聞いてるんじゃないの!と声を上げた美樹に良いこと言うなぁ、と感心する克也を見やった鵺野はそう言って一瞬陰りを見せた紫苑に、小さく眉を顰めると手元のパック牛乳へと視線を落とした。
「そういや、ぬ〜べ〜はどうなんだ?やり直したい過去の失敗なんかある?」
「ん?俺か?俺は毎日を悔いのないよーに精一杯生きてるからやり直したい過去なんてないぞ」
そう言ってえっへん!と胸を張ったぬ〜べ〜にあっそ。とそんなぬ〜べ〜を冷めた視線で見やった美樹達は再び『過去のやり直したいこと』で盛り上がり始める。
あまりにもツレない生徒達の反応に小さく肩を落とした鵺野は、美樹達の話にどこか楽しげに耳を傾ける紫苑の横顔を見やると小さく眉を下げたのだった。

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