千年歌

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生徒達の帰った教室で一人、いつものように本を読んでいた紫苑はねぇ、とかけられた声に正面に立つ美樹を見やるとその眉を微かに顰めた。
どこか、物凄く楽しげに笑みを浮かべる美樹にその隣に立つクラスメート数人を見やった紫苑はもう一度ねぇ!とかけられた声に美樹へと視線を戻した。
「どうしたの?美樹ちゃん」
「紫苑ちゃんもエンジェル様やらない?」
そう言ってその背に隠していた紙をヒラリ、と見せた美樹に『あ』から『ん』までがハートの形で書かれた紙を見やった紫苑はチラリ、と美樹の後ろに立つ郷子へと批難の視線を向けた。
ソレに小さく苦笑を洩らした郷子はそんな紫苑からソッと視線を逸らす。
きっと好奇心には勝てなかったんだろう郷子に、紫苑はやれやれ、と小さく溜息を吐きだすと開いていた本をパタリと閉じた。
「こっくりさんは禁止のはずだよ。バレたらぬ〜べ〜先生に怒られるよ?」
「そんなの大丈夫だって!ただの遊びじゃない!」
ほらほらやりましょ!なんて勝手に紫苑の側にイスを引っ張ってきて準備を始めてしまった美樹に、紙の中央に置かれた10円玉を見やった紫苑はそこに置かれる4本の指を見ると伺うように美樹へと視線を向けた。
「私は遠慮しておくよ。ぬ〜べ〜先生に怒られたくないし」
そう言ってじゃぁね、と席を立って帰ろうとした紫苑はガシリ、と掴まれた腕に満面の笑みを浮かべる美樹を見やるとヒクリ、とその表情を引きつらせた。
「良いじゃない!どーせただの遊びなんだから!それに紫苑ちゃんだって占いする側としてはエンジェル様が本当に居るか知りたいんじゃない?」
そう言ってニコニコと楽しげに笑みを浮かべる美樹に、何を言っても止めそうにない子供達を見やった紫苑はじゃぁ見学だけね、と面倒くさげに笑みを浮かべると近くの机へと凭れかかったのだった。

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