千年歌

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ガヤガヤと賑やかに草刈りをするクラスメイトに、そんな彼等をぼんやりと眺めていた紫苑はポン、と叩かれた背に小さく肩を震わせた。
「大丈夫か?紫苑さん。具合が悪いならやっぱり保健室で休んでいた方が……」
そう声をかけてきた鵺野はひどく心配そうで、そんな鵺野を見やった紫苑は苦笑を洩らすと大丈夫じゃ、と言葉を返していた。
先程の一件でひどく憔悴した様子の紫苑に、玉藻に正体を知られた、と小さく言葉にした紫苑を思い出した鵺野は、ぼんやりとする紫苑を見やると女子生徒に囲まれる玉藻へ視線を向けその表情を険しくさせた。
明らかに玉藻と何かあったであろう紫苑に、けれどもそれ以上は何も言わない紫苑に小さく溜息を吐きだした鵺野はポンポン、とそんな紫苑の頭を撫でやった。
「無理はするな、体調が悪かったらすぐに先生に言えよ!」
そう言ってニコッと笑った鵺野に、ふと、その口元に笑みを浮かべた紫苑もウン、と頷くと郷子達の所へと駆けていった。
いつも通りに振舞う紫苑の姿にヤレヤレ、困ったもんだ…と苦笑を洩らした鵺野は、鵺野先生、とかけられた声に此方にやってきた玉藻を振り返った。
「オイ、玉藻……貴様紫苑さんに何をした……?!」
どこか微笑を湛えてそこに立つ玉藻に、その表情を一層険しくさせた鵺野はそう声を漏らすと小さく拳を握りしめた。
敵意を剥き出しにする鵺野に、そんな彼を見て郷子達と談笑する紫苑を一瞥した玉藻は小さく肩をすくめるとふ、とその口元に弧を描いた。
「特には何も。ただ彼女に妖力を分けてさしあげただけですよ」
「妖力を……?」
そう言って微笑を湛えた玉藻は、怪訝そうに眉を顰めた鵺野を見やるとフッと失笑するように鼻息を漏らし紫苑へと視線を向けた。
「あまり、彼女に触れないでいただきたい。アレは貴方達下等な人間が気安く触れて良い存在ではない」
そう言って自分へと視線を戻し挑発するように笑みを浮かべた玉藻に、眉間の皺を濃くさせた鵺野は突然キャァ!!と聞こえてきた悲鳴に開きかけた口を閉じると校舎裏へと視線を向けた。
「先生!煙が……!!」
「火事だよ!!」
そう言ってモクモクと校舎裏から漏れ出す煙に、逃げ惑う生徒を見やった鵺野は霊気を発するその煙を見やるとグッと眉を顰めた。
「いや、違う……!!あれは……」
「霊気の霧じゃ……!!鳴介、早う生徒を校舎にっ!!」
大変なことになるぞ!!と声を上げたのはいつの間にか自分の元へとやってきていた紫苑で、そんな彼女を一瞥した鵺野はその霧の中から姿を露わした巨大な魚を見やると驚愕に目を見開いた。

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