千年歌

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キャーキャーと黄色い声援が上がる中サッカー勝負をする玉藻と鵺野をぼんやりと見ていた紫苑はペテン師じゃなぁ、と思いのままにボールを操る玉藻を見やるとクツリと喉を震わせた。
鵺野より一歩リードする玉藻に、そんな彼を応援するクラスメイト達を横目に見やった紫苑はしっかりせい…、となんとかボールに食らいつく鵺野へと視線を戻した。
あと少しでゴールだというところでピタリ!と動きを止めた鵺野に、そのチャンスを逃すまい、とボールをゴールへと蹴りあげた玉藻を見ていた紫苑はハァ…と溜息を吐きだすと、ジロリと自分を見やった鵺野にキョトン、と目を瞬かせ肩をすくめてみせた。
一瞬だけボールが髑髏にすり替わったことに、自分へと疑いの眼差しを向け此方へとやってきた鵺野を見やった紫苑は信用ないのぉ、と小さく声を漏らすと広や女子生徒に囲まれる玉藻へと視線を戻した。
クツクツとどこか楽しげに喉を震わせ玉藻を見やる紫苑に、同じように玉藻へと視線を向けた鵺野はその特徴的な眉を微かに寄せた。
「今のは……幻視の術……」
「ようやく分かったか?あの実習生の正体が」
まさか、と小さく声を漏らした鵺野に、クツリと喉を震わせた紫苑はまったくもー!と声を上げ此方へとやってきた郷子へと視線を向けた。
「なんであそこでボール蹴るのやめちゃったのよ!」
あと少しだったのに!とひどく納得いかなさそうな表情を浮かべ自分を見やる郷子に、もう一度玉藻を見やった鵺野は小さく眉を顰めるとそんな郷子へと声をかけていた。
「あとで、広を俺の所へ連れて来い。アイツの正体……掴めてきたぞ」
そう言ってポン、と自分の肩を叩いた鵺野に、うん、分かった…と、どこか神妙な面持ちで玉藻を見つめる鵺野を見やった郷子は不安げに頷くと広ー!と玉藻と楽しげに話す広へと駆けていった。
「紫苑さん」
「嫌じゃ」
「まだ何も言ってないじゃないですか……」
広と言葉を交わす郷子を見つつ自分へと声をかけた鵺野に、即答で言葉を返した紫苑は苦い笑みを浮かべる鵺野をチラリと見やると玉藻へと視線を戻した。
「さっきお主はいたいけな生徒を疑ったじゃろ?」
「ア、アレはだってあんなことできるのは紫苑さんぐらいだと………!」
ヤだな俺が本当に疑うわけないじゃないですか〜、とアハハハとカラ笑いを浮かべた鵺野に、まぁ()いわ、と小さく息をついた紫苑はふむ…と声を漏らすと悩ましげに玉藻を見やった。
「しかしのぉ……種族が違うとはいえ一応同胞(はらから)じゃ、人間に味方するのも気が引けるしのぉ」
「俺の生徒の命がかかってんの……!!」
もー!手を貸してくださいよ!!と地団太を踏んで自分を見下ろした鵺野に、仕方ないのぉ…と声を漏らした紫苑はキンコーン、と鳴った授業終了の合図に美樹達の所へと歩き出す。
「じゃぁ、また後でそちらに伺いますねぬ〜べ〜先生」
「あ、あぁよろしく頼むよ!」
そう言ってヒラリ、と振られた手にホント変わり身が早い、と小さく声を漏らした鵺野は、ジッと視線だけで広を追う玉藻を見やるとその目つきを鋭くさせたのだった。

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