千年歌

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「ねー!高野さんって占いとか出来たでしょー?今度来る実習の先生がどんな人か占ってよ!」
そうかけられた声に、あ、私も知りたーい!と紫苑の机に集まってきた女子生徒達に、一人机で読書をしていた紫苑は本から顔を上げると自分の目の前に立ったクラスメートを見やった。
ショートヘアにカチューシャがトレードマークのその女の子に、占いってわけじゃないんだけどな…、と小さく声を漏らした紫苑は、それでもキラキラと期待の眼差しで自分を見つめてくる美樹を見やると苦笑を浮かべ開いていた本を閉じた。
「えぇ…と…今度来る実習の先生のことだったっけ?」
何を知りたいの?と机の中に本をしまう代わりに手の平サイズの小さな手鏡を取り出した紫苑に、男の人?!女の人?!と声を上げたのは美樹とは別の女子だった。
ソレにちょっと待ってね、と手鏡へと手の平をかざした紫苑はソッと目を閉じた。
「貧狼 巨門 隷大 文曲 廉貞 武曲 破軍……
北斗の神よココに我の求める姿を映したまえ……」
そう小さく経文を唱えゆるり、ゆるり、と手を動かした紫苑は小さく波打った鏡面に、そこに浮かび上がった人物を見るとふ、と口元に弧を描いた。
鏡に映し出された優男に、美樹が喜びそうだな、と小さく声を洩らした紫苑はワクワクとした表情で結果を待つ美樹達へと視線を戻した。
「来るのは男の先生で、歳はぬ〜べ〜先生と同じくらいかな?凄く優しそうな人だよ」
良かったね、と笑みを浮かべ鏡を伏せた紫苑に、ワッ!!!とその場に歓声が上がる。
やったー!楽しみー!と声を弾ませその場を後にする美樹達に、今の小学生はおませだなぁ、と苦笑を洩らした紫苑はもう一度その手鏡を手に取るとそこに映った男性を見やり小さく眉を顰めた。
「しかし……この男、何かありそうじゃな……」
鏡に映る銀髪の青年に、優しげな笑みを浮かべるその人物を見やった紫苑は小さく眉を顰めるとポン、と叩かれた肩にフッと鏡の映像を消した。
「どうしたの?紫苑さん。怖い顔しちゃって」
何かあった?とどこか心配げに顔を覗き込んできたのは5年3組の女子の中でも負けん気の強い郷子で、それに手にしていた手鏡を机へと戻した紫苑は何でもない、と笑みを返したのだった。

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