彼と私の航海日誌

□6.5
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ドンチャン騒ぎを繰り広げる甲板に、楽しげにお酒を飲む仲間達を見やったマルコは手にしていた酒を一口飲むと小さく口元に笑みを浮かべた。
自分が渚の世界から帰ってきてもう1ヶ月が経つ。
ふと、脳裏によぎった渚の顔に、彼女はどうしているのだろう、と思い出して苦笑を浮かべる。
きっと彼女のことだ、今まで通り過ごしているんだろう、とこちらの世界に戻ってくる際に持ってきてしまった彼女の部屋のカギをポケットから取り出しソレを見やったマルコはまた小さく笑みを零した。
「元気でやってりゃぁ……それで良いかねぃ……」
そう、小さく漏らしたマルコはドンッ!と目の前に置かれた酒瓶に手元から正面へと視線を向けた。
「よー、マルコちゃん飲んでるー?」
そう楽しげに自分へと声をかけてきたのは4番隊のサッチだった。
良い感じに酔いの回っているサッチに、マルコは呆れたように溜息を吐きだすと自分の隣に腰かけたサッチを見やる。
「お前さん、明日見張り番だろぃ……そんなに飲んで大丈夫かよぃ」
「だーいじょうぶだーいじょうぶ!サッちゃんまだまだイケるぜー♪」
そう言って楽しそうに笑ったサッチはカラになったマルコのグラスへお酒を注ぎ足した。
カンパーイ!と楽しげに声をあげたサッチに、小さく溜息を吐いたマルコはサッチのグラスへ自分のグラスをぶつける。
「しっかしよぉ、世界ってホント不思議だよなー!なんだっけ?鉄の塊が空飛んでるんだったか?」
そう突然振られた話に、小さく眉をひそめたマルコはサッチが渚の世界の話をしているのだという事に、あぁ、と声を漏らすとグラスへと口をつけた。
「なんでも『ヒコーキ』って空飛ぶ船があるらしいよぃ」
俺は見てねぇけどねぃ、と言ったマルコに変な世界だよなー、と声を漏らしたサッチ。
その言葉にクツリと笑いを漏らしたマルコは宙へと視線を投げやった。
こちらの世界の話をした時も、彼女は同じように不思議な世界ですね、と驚いていた。
でもその話を聞いている時の彼女はとても楽しそうで、マルコはそんな彼女に自分の世界や、家族の話をするのが楽しかったのだ。
「電伝虫と映像電伝虫とかが一緒になった機械もあるんだろー?」
そう声をあげ、いつの間にか話に加わっていたエースにマルコは苦笑を洩らすとグイ、とグラスを仰ぐ。
「『ケータイデンワ』ってやつだねぃ。小せぇ板みたいなので通話や手紙のやりとりができるんだとよぃ」
そう言って手の平サイズの長方形を描いたマルコにヘェ!と声を上げたのは12番隊のハルタだった。
次々と自分の周りに集まってくるメンツに、マルコは小さく苦笑を洩らすとグラスを仰ぐ。
空になったグラスに、それを差し出したマルコを見やりお酒を注いだサッチは、どこか上の空なマルコを見やると自分のグラスへと視線を落とした。
「その『渚ちゃん』の居る世界には海を泳ぐデッケェ海王類も、ましてや海賊もいねぇんだろ?」
ちょっと寂しいなぁ、と零したサッチを一瞥したマルコはそんな彼に言葉は返さず再び宙へと視線を投げるとお酒を仰いだ。

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