彼と私の航海日誌

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「ただいまー」
いつものように仕事を終え、靴を脱いでリビングに向かうとテーブルの上に夕飯が並べられていた。
それにえ?と声を漏らすときっと冷蔵庫を漁っていたんだろうマルコさんがヒョコリ、とキッチンから顔を覗かせた。
「お帰り、今日は少し遅かったねぃ」
トラブルかぃ?と聞いてきたマルコさんに発注ミスがあって、と返してカバンを置いてテーブルを見やる。
色とりどりのオカズに、メインなんだろう大きめの魚がデンッとテーブルの真ん中に置かれてあった。
「メシにするかねぃ」
腹減っただろぃ?と晩酌用のお酒なんだろう、グラスを二つ手にテーブルへと座ったマルコさんへと視線を戻す。
「え……?コレ、マルコさんが作ったんですか……?」
「いっつも作ってもらってばっかじゃ申し訳ないからねぃ。あぁ、ちぃと勝手に金を使わせてもらったよぃ」
良かったか?と少し申し訳なさそうに眉を下げたマルコさんにフルリと首を振ってイスに座る。
フワリと香るのは香ばしい香りで、思わずグゥ、とお腹が主張する。
「調味料がいまいちわからなくてねぃ、味に保証はねぇよぃ」
そう言ってクツリと笑ったマルコさんはグラスにビールを注ぐとソレを私に差し出した。
それにお礼を言ってグラスを受け取りもう一度料理に視線を落とす。
魚介類をふんだんに使ったそれは今までみたことないタイプの料理ばかりだった。
マルコさんと2人いただきます、と手を合わせて箸を手に取りエビや貝の入ったそれに手を伸ばしパクリ、と一口食べてみる。
「………美味しいっ!」
素材の旨みを生かした味付けに、思わずそう声を上げてしまった。
え?なにこれ凄い美味しいんですけど!?
まるで料理人が作ったようなその味に、パクパクと箸を進めていると正面に座っていたマルコさんがクツリと楽しげに笑った。
「そんなに慌てなくても逃げねぇよぃ」
口に合ったみたいで良かったよぃ。と笑ったマルコさんにプロの味だ。と零せば苦笑したマルコさん。
大げさだねぃ、と笑うマルコさんは楽しそうで、動かしていた箸を止めた私はそんなマルコさんを見やる。
「マルコさん……本当に私の料理、美味しいんですか……?」
私なんかが作る料理より遥かに美味しい彼の料理に、不安になってそう聞けばビールを飲んでいたマルコさんが不思議そうに小首をかしげた。
「当たり前だろぃ?本当ならお前さんが作った晩飯が食いたかったんだけどねぃ」
空腹には勝てなかった、と苦笑を漏らした彼に、もう一度テーブルに並べられた夕飯を見る。
何品も並べられたオカズは結構ボリュームもあって、よく一人でこれだけ作れたな、と感心してしまうしお皿に盛り付けられた二人分以上はあるであろう料理に、これ二人じゃ食べきれないんじゃ?と思ってしまうぐらいだった。
そう言った彼に思わず味覚音痴?と小さく呟けば美味い不味いぐらいはわかるよぃ、と怒られた。
それに苦笑を漏らしながらテーブルの真ん中に置かれていたお魚を小皿にとる。
「コレなんていう魚ですか?」
「あー……なんて言ったかねぃ……『マダイ』?の海王類風ソテー」
真鯛とか……、高かったんじゃないですか?と思わず聞けば八百屋のオジサンが安くしてくれたんだとか。
どうやら買い物一つでも交渉だとかしたらしい……!
主婦か!
案外すんなりとまけてくれたと言ったマルコさんに、多分マルコさんの交渉術が上手いんだろうなぁと思いながら平皿に乗ったマリネをパクリと咀嚼する。
「マリネにグレープフルーツ入ってるなんて珍しい」
美味しい、と言いながらそう零せば同じようにマリネを食べたマルコさんがそうかぃ?と首を傾げる。
「空島風スカイシーフードだよぃ」
グレープフルーツは風味付けらしい
ホント本格的だな……!!
なんか今まで物凄く質素な夕飯出してたような気がしてきたぞ……

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