金色猫とタンゴ

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「っ、それが駄目だって分かったのは………小6になってからで……、背も伸びて、顔もちょっと大人になって………そしたらさ、アイツ…私の顔見て『年々あの女に似てきやがって、胸糞悪い』って………。
どんなに好かれようと頑張ったって、親父からしてみれば私の『存在』自体がもう嫌だったんだなって……思ったら………もう、なにかもがどうでも良くなって……気が、ついたらっ、悪さばっかりしてたっ………」
そう言って、なんでこうなっちゃったのかなぁ、と泣き笑いを浮かべた幸に、とめどなく溢れるその涙を見やったマルコはゆるり、とそんな幸の頭を撫でると優しい手つきで幸の背をポン、ポン、とたたいた。
「互いが互いに、向く方向を間違えちまっただけなんだよぃ。お前ぇは父親に愛してもらいたくて必死で、父親は……きっとそんなお前ぇのことをどう愛してやったら良いかわからなくなってたんだろうねぃ………」
そう言ってゆるりゆるり、と背中を撫でるマルコに、一つ大きく息を吐きだした幸はそんなマルコの声に耳を傾けるとソッと目を閉じ小さく口元に弧を描いた。
「うん………そう、だね……。アイツにだって、私に優しかった時もあったんだ…………名前を呼んで、笑ってくれて………。もう一度だけ、親父に…………愛情をもらいたかっただけなんだ」
今では朧げにしか覚えていない父親との楽しい記憶に、そう小さく声を漏らした幸はもう無理だけど!と自分の背を撫でるマルコを見上げるとその顔に笑みを浮かべてみせた。
まだ少しだけ涙の痕が残る幸の顔に、困ったように笑みを浮かべたマルコはそんな幸の肩を抱き寄せるとその胸に幸を抱き締めていた。
「もう、一人で抱え込まなくて良い。俺がちゃんと、お前ぇの傍にいてお前ぇの抱えてる不安も、ちゃんと聞いてやるからよぃ」
「………っ、ヴン」
大丈夫だ。と耳元に囁かれた声はどこまでも優しく響き、その背を撫でるマルコの手の暖かさと、体を包み込むその大きな存在に幸は小さく頷くとまた、涙を零したのだった。



優しい笑顔と、暖かい手にをした



何処までも優しいマルコと、そんなマルコに少しずつ惹かれていく主とか


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