金色猫とタンゴ

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カシャ、と鳴った携帯のシャッター音に、その中に写った野良猫の画を満足げに保存した幸はソレをマルコとのトークへと添付すると送信完了が表示されたソレを見やり、木陰でまどろむ野良の側へと腰掛けた。
「お前、この前より太ったね……」
「ンニ゛ァ〜……」
野良にしては随分と肉付きの良い体に、斑模様のその猫の体を撫でやった幸はこの学校の生徒達から餌付けされているんであろうその猫を見やると小さく苦笑を洩らした。
生まれつきなのか、歳を取っているからなのかしゃがれた声のその猫に、毛並みの良い体を楽しむ様その体を撫でていた幸はピロン、と着信を知らせた携帯を開くとマルコからの返信を見て小さく口元に弧を描いた。
『相変わらず不細工な猫だな』と返ってきた返信に、そこが可愛いんだよ、とマルコへと返信するため文章を打っていた幸はふと携帯に落ちた影に、携帯から視線を上げると上を仰ぎ見、その顔を引きつらせた。
「ゲッ……スモヤン……」
「授業サボって楽しくゲームか……?あぁ?」
威圧感溢れる佇まいで自分を見下ろす生徒指導の先生に、ヤバ…と小さく声を漏らした幸は自分へと伸ばされたスモーカーの手に咄嗟に携帯を後ろ手で隠すとそんなスモーカーからサッと身を引いた。
「テメェみてぇなバカがいるせいで学校での携帯の使用が禁止されんだぞ、幸・アメリア」
「アー、ハイハイすいませんでした。あんまカッカしてると禿げるよスモヤン」
捉え損ねた手に、小さく舌打ちを零しそう声を低くさせたスモーカーは、そんな自分を一瞥し芝生から腰を上げた幸を見やるとピクリ、と眉を震わせその口端をいびつに釣り上げた。
「誰のせいで苦労が絶えねぇと思ってんだ、不良娘……!!あと教師をあだ名で呼ぶんじゃねぇ!スモーカー『先生』だっつってんだろ……!」
「その顔で『先生』とか。面白いね、スモヤン」
そう声を荒げたスモーカーに、銀髪三白眼の目の前の教師を見やった幸は額の青筋を増やしたスモーカーに、足元の野良をトン、と足でつつくとソッとそんなスモーカーから後退した。
「っ………!!このクソガキ……、珍しく一限から現れたと思ったら早々にサボりやがって……!!授業ぐらい顔出しやがれっ、幸……!!!」
「ヘーヘー、そんな怒鳴らなくたって聞こえてるって」
「ニ゛ャァ----!!!」
肩を震わせ声を上げたスモーカーに、その怒声に驚きその場を逃げ去る猫を横目に見やった幸は再び伸びてきたスモーカーの手をヒラリ、とかわすと面倒くさげに肩をすくめそんなスモーカーから逃げるようその場を走り出した。

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