金色猫とタンゴ

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チン、と到着した1階のエレベーターに、高層マンションから出た幸はその立派なマンションを仰ぎ見ると呆けた様にポカリ、と口を開けた。
3LDKはあったであろうマルコの部屋に、一流企業の人間だろうか…、と40階はあるであろうマンションの35階に住んでいたマルコにそう声を漏らしていた幸はおぉーい、と上から降ってきた声にビクリと肩を震わせた。
「幸!気ぃつけて帰れよぃ!」
「っ……」
そう言ってベランダから顔を覗かせたマルコに、ヒラリ、と手を振ったマルコを見やった幸はグッと言葉を詰まらせるとそんなマルコから顔を逸らす様その場を駆けだしたのだった。



 ――――
ガヤガヤと人で賑わう飲食店に、イスに腰掛け鞄を漁っていた幸はなかなか見つからない目当てのモノに怪訝そうに眉を顰めると小さくあれ…?と声を漏らしていた。
「なんだよ、どうかしたのか?」
「タバコが……ない」
ソレに正面に腰かけていたエースへとそう小さく返した幸はおかしいな、と再び鞄を漁ろうとして、ふと、脳裏に過ったマルコの顔にピタリ、とその手を止めた。
「………アノパイナップル……!!」
きっと見つけた際に抜いたんだろう煙草ケースに、そう声を震わせた幸は不思議そうに小首を傾げるエースを見やると、深々と溜息を吐きだしなんでもない、と言葉を返すと不貞腐れた様にテーブルへと突っ伏したのだった。


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