金色猫とタンゴ

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肌を撫でた暖かい空気に、ふと意識を浮上させた幸は視界に入った水色のシーツを見やるとはた、と目を瞬かせた。
自分の物ではないその布団に、二人組の男に無理矢理路地裏へと連れ込まれた所までは記憶にある幸はガバリ!!とその身を起き上がらせると咄嗟に自分の体へと手を宛がった。
(良かった……服は着てる……)
最悪の事態だけは免れたことにホッと息を吐きだした幸はそれでもそこが自分の部屋ではない事にキョロリ、と辺りを伺うように見回した。
シンプルな部屋に、その鼻を掠めたのは男物の香水の匂いで、ソレにますます眉を顰めさせた幸は取りあえずここから逃げよう、とベッドから足を下ろし、ふとその足首に巻かれる包帯を見やり目を瞬かせた。
真っ白い包帯が巻かれる足に、額や口元に貼られているガーゼへと手を触れた幸は『誰か』が自分を介抱してくれたのだと言うことに気が付くと、再びキョロリ、とその『誰か』の部屋を見渡した。
本棚に乱雑に詰め込まれる雑誌や何かの資料に、壁に掛けられてあるコルクボードへと視線を向けた幸はそこに貼られている写真を目に留めるとソッとベッドから立ち上がりそのコルクボードへと歩み寄った。
社員旅行か何かの集合写真なんだろうソレに、中央に構える初老の大男を見やった幸はその男性を取り囲む様集まる集団を見やると小さく眉を顰めさせた。
(男ばっかだ……)
右を見ても左を見ても男だらけのその集合写真に、年齢も50代から20代、と幅広いその顔ぶれを見やった幸は何処なんだ此処…、と小さく零すと不意に開いた扉にビクリと肩を震わせた。
『…………Are you awake now?(目が覚めたみたいだねぃ)』
「????」
室内へと入ってきた男性に、自分を見るなり英語を話し始めたその男性からひどく困惑したように数歩身を引いた幸は、トレーを手に自分へと歩み寄って来る男性を見やると知らず知らずのうちに壁際まで後退していた。
『How do you feel now?(気分はどうだぃ?)』
コトリ、とテーブルに置かれたトレーに、なおも困惑気味にそんな男性を見ていた幸は、どこか様子を窺うように自分へと視線を向ける男性に、はた、と目を瞬かせると自分の容姿を思い出しあぁ…と声を漏らしていた。
「に、日本語でダイジョウブ……です」
「あー………、そうかぃ。気分はどうだぃ?昨日なにがあったかは覚えてんのかぃ?」
そう言ってソッと申し訳なさそうに自分から視線を逸らした幸に、流暢な日本語を喋った目の前の英国女子を見やったマルコは毒気を抜かれた様に頭をかくとベッドサイドへと腰掛けた。
ソレにマルコへと視線を戻した幸は昨日…?と小さく声を漏らすとふと、壁に掛けられていたデジタル時計を見やりギョッと目を見開いた。

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