そして君に恋をする

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最近、永四郎の様子がおかしい。
普段はいつもと変わらないけどたまにふっと遠くを見つめたまま動かなくなる。
それに気づいたのは1週間ぐらい前だった。
多分裕次郎や凛も気づいていないホントに微かな変化だったんだろう。
でも人のちょっとした変化に気づくと人間って気になるもので……。
ここ暫く黙って永四郎の様子を伺っていた。
心配事があるなら多分凛かその辺に相談するだろうし。
そう思いながら数週間が過ぎた。






―――――
「はいたい、永四郎」
学校について鞄を下ろすと部活で相談したいことがあったので遠く離れた永四郎の席までわざわざ来る。
けれど永四郎からは何の返答もない。
「エーシロー……?」
おーい、と声をかけてみても黙って窓の外を見ているだけ。
永四郎の視線を追いかけ窓の外を見るがそこには真っ青なぐらい晴れた空しか広がっていなかった。
「おーい……木手君……?」
私は窓から再び永四郎へと視線を戻す。
流石に3回も無視されると頭に来る。
「ハロー!!キティ!!」
それなりの音量で叫んだためクラスの数人がこちらを振り返った。
後方では裕次郎が机を叩いて爆笑している。
あぁ、やっちゃったな。なんて教室を見回しているとガタン、と椅子が引かれる音がした。
恐る恐る振り返ると立ち上がって私を見下ろす永四郎の姿。
逆光でよく顔は見えないが確実に怒っている。
「は…はいたい……」
「はいさい、一回堕ちれば良いですよ」
そう言ってグッと首を絞められる。
あら……結構本気だわ……。
「ご…ごめ……。だって、永四郎が無視するから……」
「聞こえてますよ、最初から」
永四郎は呆れたように言うと手を離して席についた。
私は絞められた首を擦りながら再び永四郎を見る。
聞こえてたんなら返事ぐらいしろよ。
ニリーさぁ、と呟いた永四郎に怒りを覚える。
「何か用でしょう」
そう聞いてきた永四郎に、あぁ、と用事を思い出す。
永四郎の前の席にもたれ掛かると手に持っていたプリントを渡す。
「個人の練習メニュー。前にもうちょっと練習量増やしたいって言ってたでしょ?」
今でも十分多いと思うんだけどな……。
そんなことを思いながらプリントに目を通す永四郎を見る。
「まぁ、これで良いんじゃないですか?」
そう言ってプリントを返される。
いつもだったらここをもっとこうしろとか五月蝿いのに……。
再び永四郎に視線をやると鬱陶しそうな顔をされる。

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