そして君に恋をする

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−sid甲斐−

「あの先生話長げぇんだよぉ……」
委員会の会議からやっと開放され教室に戻ると誰も居なかった。
当たり前は当たり前なんだけどよぉ……。
まぁ永四郎には部活遅れるって言ってあるし良いさぁ。
そんなことを思いながら俺は自分の席に置きっぱなしの鞄とテニスバッグを肩にかける。
そしてふと隣の席に視線を移す。
つい最近やった席替えでたまたま楓が隣に来た。
柄にもなくはしゃぐ俺を見て楓は呆れたように笑ってたな……。
けど、嬉しかったんさぁ。
いつも後ろの席から永四郎と楓を見ていた。
転校してきた当初はうちなーぐちも良く理解できないみたいで永四郎に教えてもらってたよなぁ、あいつ。
ホントは俺が教えてやりたかったんさぁ……。
なんだかんだ言いながら仲の良い永四郎と楓が羨ましかった。
けど……本当は永四郎じゃなくて凛が一番羨ましいんさ……。
楓の机にソッと触れ俺は校庭に視線を移す。
ここからはテニスコートが良く見える。
どうやら今各部員で打ち合いをしているみたいだ。
窓を開けてその風景を見ていると視界に楓が写る。
寛君と打ち合いをしているらしい楓はポイントを取ると嬉しそうに飛び跳ねる。
それを見ていると自然と笑みが浮かんでくるのが分かった。
自分でも重症だってことは分かってる。
暫くそんな楓を眺めていると凛がやってきて楓に何か話していた。
あぁ…楓のやつ嬉しそうなちらしやがって……。
一言二言会話をすると凛は楓から離れていく。
そんな凛の後姿を見ている楓に胸が痛む。

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