そして君に恋をする

□7
1ページ/2ページ

保健室についた私は取りあえず甲斐君と知念君を椅子に座らせてグルリ、と保健室を見回した。
けどどこにもいな先生に、思わず溜息が零れてしまった。
せめて外出中なら札でも下げておいてほしかった。
まぁ仕方ないから勝手に道具を拝借してしまおう。
「なんでわんまで……」
ガサゴソと勝手に棚を漁っていれば、甲斐君の隣に座っていた知念君がポツリと呟いた。
ソレに見つけた消毒液と脱脂綿を手に、私は先に甲斐君の傷を手当てしながら知念君へと視線を向ける。
「足首……捻ってるでしょ?」
「…………あいひゃぁ……あきさみよぉ。なんでわかったさー?」
そう言った私にパチクリと目を瞬かせた知念君はひどく不思議そうで、きっと気づかれないと思っていたんだろう彼に思わず溜息を吐きだしてしまった。
「右足、庇うように練習してたから」
そう言いながら消毒液を甲斐君の腕に押し付ければあがー、あがー、と言って逃げようとする甲斐君に、その手を捕まえて消毒を続行するする。
「楓はふしがらんさぁ」
「ふ、ふし……?」
地団駄することで痛みを堪えているんだろう甲斐君はそう言うと私を見た。
未だ覚えきれていないうちなーぐちに、んんん?と眉を顰めそんな甲斐君へと聞き返す。
「ふしがらん、『凄い』って意味やっさぁ」
「凄くなんかない。それが当たり前なの」
そう言ってニカッと笑った甲斐君に、思わずぶっきら棒に返してしまった。
だってそうだ、そんな事も分からなかったらテニス部のマネージャーなんてできない。
だっていつも、国光やみんなのプレーを見ていたんだ。
怪我を隠してまで練習しようとするテニス馬鹿、青学にはわんさかといたんだもん。
少しでも変な素振りを見せればすぐにわかるんだ。
「わじっちょるのか……?」
「は?」
グルグルと、無言で包帯を巻いていく私に甲斐君はそんな私の顔を恐る恐る覗き込んできた。
わじっちょる……?
「あー……、怒ってるんかなぁって」
そう言って頭をかいた甲斐君に私はそうかもね、と言葉を返す。
「次、知念君ね」
「あ、あぁ」
巻き終えた包帯をパッチで止めてはい終了!と甲斐君の腕を叩けばあがー!!と上がった声。
ソレにひっそり笑って今度は知念君の手当てに入る。
少し腫れている右足首に湿布を貼って包帯を巻いていく。

次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ