そして君に恋をする

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「は、はいたい……」
「はいさい。」

意を決してかけた挨拶に一拍も置かずに返ってきた返事が逆に恐い。
私を置いて逃げた甲斐君をちょっと恨むぞ。
「アンタは人を馬鹿にしかできないんですか」
「そういうわけじゃ……」
そう零された言葉に、なんて返せば良いのか分からなくて言葉に詰まっていれば上から溜息が降ってきた。
「ほら、これ」
そう言ってスッと差し出されたのは分厚目の冊子だった。
差し出されたソレを恐る恐る受け取って木手君を見やる。
向けられる視線に、木手君は右手の甲で左側のフレームを持ち上げるとそんな私から視線を外した。
「先生が五十嵐さんに渡して置くようにと言っていたのでね、昨日。
比嘉中の校則や年間行事が書かれているんでしょう」
そう言った木手君に手の中の冊子を見やる。
そんなもの、机の中に入れといてくれれば良かったのに。
それをわざわざ直接渡してくれたんだ。
手渡ししてくれた冊子に、ありがとう、とお礼を言えば木手君はさっさと教室に入ってしまった。
それに私も手の中の冊子を見て、少し遅れて教室に入った。
教室に入り甲斐君の机を見れば、先に教室へと逃げた甲斐君は少しだけ申し訳なさそうな視線を私へと向けていた。

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