そして君に恋をする

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翌日の学校へ向かう私の足取りは非常に重かった。
そして何故かみんなから注がれる視線がいやに痛い。
あっれぇ……、東京モンはそんなに嫌われてるのか…?
「ハイサイ!!」
沖縄人は親切だって聞いたんだけどなぁ、とそんなことを考えていると勢い良く背中を叩かれた。
バシン!と聞こえた音に、痛みに耐えながら後ろを振り返ればそこには甲斐君が立っていた。
「ハ、ハイサイ……」
「違う違う、ヤーは『ハイタイ』さー」
そう言って笑う甲斐君に「あー…」と微妙な返事を返す。
「女は『ハイタイ』男は『ハイサイ』さぁ」
未だ理解しきれていない沖縄弁に、丁寧に教えてくれる甲斐君。
なるほど、男と女では挨拶の仕方さえ違ってくるのか。
「難しい……」
「これから覚えてけばじょうとうさぁ」
それに思わず言葉を零せば再び甲斐君に背中をバシバシ叩かれた。
甲斐君は元気だなぁ……。
「ところでヤーのヤーやこっちなのか?」
「あー……はい?」
「あーっ、ニリー!!やーの家はこっちなのかって聞いちょるやっさー!!」
え?なに?と頭に疑問符を浮かべていればそう声を荒げた甲斐君は、ダンッと地団駄すると今来た方向を指差した。
だって仕方ないじゃないか……「やーのヤーや」って、「ヤ」ばっかで意味わかんないんだもん。
怒鳴られたことに、そうだけど…、と不貞腐れながら答えると「あー…わっさん…」と沈んだ声が返ってきた。
たしか「わっさん」はこっちでは「ごめん」だっけかな……。
きっと怒鳴ってしまったことを謝っているんだろう。
「あ、いやごめんね。まだホントちょっとしか沖縄弁分かんないからさ……」
どこか申し訳なさそうにその肩を下げる甲斐君にそう言えば、甲斐君は再び笑みを浮かべ私の頭をポンポンと叩いた。
「うちなーぐちさぁ、あ、うちなーやまとぐちでもじょうとうさぁ」
そう言って笑った甲斐君に、そう言えば沖縄弁を「うちなーぐち」って言うんだったなぁ、なんて本で読んだことを思い出す。
甲斐君はそのうちなーぐちが分からない私に、単語やら基本的なことを教えてくれているらしかった。

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