灰色世界

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「んで、なんか相談したい事があんだろ?手短にしろよ」
「じゃー手短に。ウタさんとちょっと色々ありまして、どうしたら良いのか分からなくなって君に意見を聞きに来た」
これから貴未と出掛けんだよ、と溜息を吐きだした錦君に見りゃわかるよ、と返してザックリと今回突撃訪問した理由を話せばアバウトすぎんだろ…とまた溜息をつかれてしまった。
だって君が手短にって言ったから用件だけ述べたんじゃないか!!
「喧嘩でもしたんっすか……?」
「ケンカ…ってわけでもない。ただ一方的に私がウタさんにムカついちゃったって言うか、嫌な態度とっちゃったっていうか……」
「あぁ〜……ようは自分でも悪いと分かっちゃいたけど口に出ちまったってやつだろ?アンタホント昔からすぐ態度に出るよな」
治せよ、と呆れたように溜息を吐きだした錦君に、治せてたらこんな事になってないわ、と私も溜息を吐きだす。
「まぁ、あの人の事だから別にそんなに気にしてねぇと思うけどな。アンタが気にしてんだろ?嫌な態度とっちまったこと」
「ヴッ……。ちょっと……時間経って冷静に考えたら……流石にアレは無かったんじゃないかと、自己嫌悪しまして……。ただ……時間が経てば経つほど……」
「謝りにくくなった、と」
そう言ってあー、クソ阿呆だな。と笑った錦君に返す言葉もみつからない。
確かに、疑われたこともロケットを取られたことも腹は立ったけど、よくよく考えてみればそれは仕方のないことで、謝らなければと思った時にはもうあれから随分と日も経ってしまっていて……
このまま何もなかったフリして過ごしてしまえば楽なのだろうけれど、自分に非があると分かっていて悠々自適な態度をとれるほど、図太い神経してないんだよ……
カラリと笑う錦君にどうしたら良いと思う?と聞けば答えは出てんだろ、と返されてしまう。
「気になんならさっさとウタさんとこ行って謝っちまえよ。クソ面倒くせぇ性格しやがって……」
「それが出来てりゃ君に相談しに来てないし自分でもメンドクサイ性格だって事ぐらい重々承知してんだよ、馬鹿錦」
そう言ってクソ…と悪態をつけば深々と溜息を吐きだした錦君がちょっと待ってろ、と言って奥の部屋へと歩き出してしまった。
何やらラックをガサゴソ漁る錦君に、なんかいい打開策でもあるんだろうか、と思っていれば探し物を見つけたのか錦君が私を振り返るとほらよ、と何かを投げてよこしてくれた。
「しゃーねーからあの人に会いに行く口実作ってやるよ」
そう言って投げ渡されたのはどこかで見たことあるマスクで、あぁこれ錦君が『:re』で使ってたマスクだ、と思いつつソレを見て、錦君へと視線を向ける。
「………西尾『錦』だから『ニシキヘビ』……?」
「あぁ、あの人たまに突拍子もねぇモン作るかんな。四方さんは『烏』で金木のは……ウタさんは『眼帯』がモチーフだっつってたが俺には歯ぐきにしか見えなかったな……」
安直だな、と思いつつそれでもまぁウタさんらしいかな、とちょっと目元の部分が欠けているそのヘビのマスクを見ていれば、そんな私の元へと戻ってきた錦君にグシャグシャ!と頭を撫でられた。
「ちょうど修理に出そうと思ってたからよ、ソレ持ってくついでに謝ってこいよ」
「ン……ありがと。デート楽しんできてね」
「おう」
そう言ってクシャクシャにされた髪の毛を直した私は彼のマスクをカバンに詰め込むとウタさんの店へと向かうべく錦宅を後にしたのだった。

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