お話V

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3日目、そろそろ屋外に出て童守町を散策しなければな、とi Phoneからポケベルへと時代が逆行した通信機器に、私ポケベルなんて初めて持つよ!とちょっと感動しながら出掛ける準備をしていればピンポーン、と鳴らされるチャイム。
流石に二連ちゃんでお隣さんが訪問してくるわけもないだろう、と思いつつ扉を開ければそこには涼しい顔したお隣さんが立っていた。
「こ、んにちは……」
「どうも」
基本表情のない玉藻さんに、笑えば良いのに、とか思いつつ挨拶をすれば簡素な挨拶(アレ?コレ挨拶って言って良いの?)が返ってきた。
あ、でもHAHAHA,とか言って笑ったら笑ったでちょっとどうしたの?!ってなるからやめてほしい。理袋だとかを思い出してしまう。
「え、っと……今日は何用で……?」
これから出掛けるんですよー、お話したいのは山々なんですけど流石に二日連続でその端整な顔は見ていられませんよー、とか心の中で思いながら言葉をかければスッと目の前に差し出された紙袋。
ソレにキョトリと目を瞬かせていればどうぞ、と言われた。
どうぞって事は貰って良いってことなんだよね……?
取りあえずありがとうございます、とソレを受け取って中を見やればなんかちょっとお高そうな菓子折りが入っていた。
「え?え?どうしたんです、コレ」
「お近づきの印です。これから隣同士、何かと御足労かけると思いますのでそれの御挨拶です」
御足労、って……確かに昨日のは初っ端からちょっとビックリしたけど。
わざわざありがとうございます、と呆けたように言葉を返せばでは、挨拶したのでこれで。とまぁ素直な言葉を残して玉藻さんは隣にある自宅へと戻って行った。
パタン、と閉じられた扉に、変に生真面目だなあの妖狐、とか思いつつ早速受け取った菓子折りを広げれば中には高級感漂うカスティラが入っていた。
カステラだよ!!なんか久しぶりに見る!!しかも『童守亭』って書いてあってちょっとテンション上がる!!
童守亭なる店がどれだけ有名かなんて知らないけどまぁきっとあの人の事だ、そんじょそこらの安物のカステラを買ってくるわけないだろう、そう思いながらワーイ!と早速受け取ったカステラを食べるため私はキッチンへと向かったのだった。


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