千年歌

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それから数日してやってきた教育実習生は紫苑の占いどおりの人物で、キャーキャーと盛り上がる女子生徒達に、そんな教育実習生こと『玉藻京介』を自分の席からなんとはなしに眺めていた紫苑はスン、と小さく鼻を動かした。
(あぁ、成程……どおりで懐かしいわけだ)
教室に彼が入ってきた瞬間感じた懐かしさに、プンプンと獣臭を漂わせる教育実習生を楽しげに見ていた紫苑は、ふとこちらに視線を向けた玉藻に、ニコッと笑みを浮かべる玉藻を見やると愛想笑いを浮かべそんな玉藻からひどく不機嫌そうに仏頂面を浮かべる担任へと視線を向けた。
「鳴介、そう膨れるでない」
「別に膨れてなんかない!!」
良い歳した男が、と小さな声でかけられた言葉に、教室の後ろにイスを持ってきて女子生徒に囲まれる玉藻を気に喰わなさそうに見ていた鵺野は、そう言って苦笑を洩らした紫苑にフン!とそんな紫苑から顔を背けた。
子共のようにむくれる鵺野に、ヤレヤレと肩をすくめた紫苑は女子生徒にチヤホヤされる玉藻へと視線を戻すとクツリと喉を震わせた。
隠し切れていないその禍々しい妖気に、さぁ誰の首を狩りに来た…?と小さく零した紫苑は、クラスのムードメーカーである広に声をかけた玉藻を見やるとその口元をひどく楽しげに弓なりにさせた。
「のぉ、鳴介……」
「ンー?なんですか?」
ふと、自分を振り返り声をかけた紫苑に、手持無沙汰というように名簿へと視線を落としていた鵺野は、自分を見やり机に頬杖をついた紫苑を見やると小さく眉を顰めさせた。
「気をつけろよ……お主の大事な生徒の首に、鎌があてがわれたぞ」
そう言って、至極楽しげに口端を釣り上げた紫苑に、パチリと目を瞬かせた鵺野は呆けたようにそんな紫苑を見やった。
なんのこっちゃ、と言いたげに向けられる視線に、そんな鵺野から広と一言二言言葉を交わす教育実習生へと視線を戻した紫苑は面倒なことになってきたのぉ、とひどく楽しげに喉を震わせたのだった。



さぁ、お手並み拝見といきましょう


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