そして君に恋をする

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『裕次郎は勉強ちばりょー』
「あいひゃぁ……エーシローが厳しいんだしよ……」
集まって勉強会してるって分かったんだろうな。
さっきの永四郎のスパルタを思い出して溜息が出る。
『まぁ私もちばらなきゃねぇ、裕次郎に負けたくな「楓ー!!俺ともテニスしよーよ!」うっわ、エージ危ない!』
楓の声に混ざって聞こえてきた別の男の声。
受話器の近くから聞こえたって事は楓にくっついてんじゃねぇか?!
しかも『エージ』って明らかに名前だよな……。
ワッター以外で楓が名前呼ぶのは幼馴染の『クニミツ』だけだと思ってたさ……。
ガガッとノイズが入る。
「楓ー?ちゃーさびたが?」
『わさん、ちょっと今「楓!電話は後でもいいじゃん、ほら、俺とテニスー!」あー、裕次郎!またあとでかけるから!あんしぇやー!』
心配になって声をかけると再び聞こえてきたイキガーの声。
「あぃ?!おぃ[プツッ ツー ツー ツー]」
そう言った楓にプッツリと電話が切られてしまった。
多分きったのはさっきのイキガー……。
「ばぁよ!あぬひゃー?!」
もう繋がっていない携帯を握り締めて叫ぶと周りで茶化していた凛達がピタリと静かになる。
「裕次郎……?ちゃーさびたが……?」
恐る恐る声をかけてきた凛を押しのけて俺は持っている鞄の中で一番大きなものを引っ張り出す服やらなんやら詰め込んだ。
楓の側に知らない男がいる。そう思っただけで不安で不安で仕方がなかった。
チャックを閉めて財布をポケットに突っ込むと歩き出す。
「おい!裕次郎?!まぁいちゅんだしよ?!」
「楓の所だよ!!」

「「「はぁ?!」」」

慌てて止めようとする寛君の手を払いのけて俺は玄関を出た。

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