そして君に恋をする

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その日の夜東京に着いた私の元へ永四郎から珍しくメールが来た。

『Frm:永四郎
 Sub:戻って来い
 本文:
 田仁志君が甲斐君の作ったサーターアンダギーでお腹を壊しました。
 ぃやーがいないあと4日が不安で仕方ないんですが?』

半分切れ気味な永四郎のメール文に思わず苦笑する。
タニシが腹痛起こす料理なんてあったんだなぁなんて関心しながらちばりょーと返信を返した。






−−−−−
朝目が覚めてカーテンを開けると正面に立つ家は見覚えのないものに……。
いや、違う違う、1年前まで良く見てたご近所さんの家じゃないか!
どうにもここ最近はカーテン開けて裕次郎と挨拶するのが日課になっていたからな……。
昨日の夜東京にある自分の家についた。
結局昨日はバタバタしてたから寝るのが遅くなってしまった。
時計を見ると10時半。
着替えて適当に朝食を済ませた後テニスバッグと皆のお土産を手に玄関を出た。





去年まで当たり前のように見ていた光景が何か懐かしかった。
数歩歩けば国光の家。
チャイムを鳴らすと暫くして扉が開かれた。
「どちら様………楓……?」
私服の国光が扉を開けてこちらを向いた。
私と目が合うと驚いたように目を瞬かせた国光。
「はいたい、国光」
「『はいたい』じゃないだろう。何でいる」
うわぁ、久しぶりに会ったのに冷たいお言葉……。
玄関先に出てきた国光は腕を組んで私を見下ろしていた。
「え……、何でって春休み使って戻ってきた。驚かせたくってさ、サプライズサプライズ」
「連絡もなしにいきなり来るのはこちらが迷惑だ」
言われると思ってたけどさ!!
こいつがサプライズで吃驚するような人間じゃないってわかってたけどさ!!
「上がっていけと言いたい所だがこれから不二達と約束をしていてな」
そう言って国光は玄関先においていたテニスバックを見せた。
なんだ、こいつもみんなとテニスするのか。
私も出来れば混ぜてほしいなぁ、なんて思っていたら国光がフッと笑った。
「どうせ来るんだろう。あいつ等ならサプライズも喜ぶだろう」
「ありがと!あ、これお土産ね」
持っていた紙袋を国光に手渡すとすまないなと言って受け取り中を見る。
沖縄のサトウキビとお酒、そして国光には手のりサイズの小さなシーサー×2。
「……小さいな」
「あのね、アンタがご所望の屋根の上にあるシーサーや門構えに置いてあるシーサーなんか買ったら私が破産するわよ」
少し不服そうにそう言う国光を睨み付ける。
そうか、と諦めたように言うと国光はお土産を居間へと置きにいった。
『お祖父さん、楓が来てますよ』
『ほぉ』
どうやら居間には国一さんもいるようで国光と共に玄関に出てきた。
「お久しぶりです、国一さん」
「久しぶりだな、向こうでちゃんとやっているか?」
「えぇ、それなりに」
お父さんよりお爺ちゃんに似た国光。
二人が並ぶと威厳あふれるなぁなんて思う。
「あぁ、国一さんにお酒、入れときましたから晩酌でもしてください」
「変な気は使わんで良い。」
ピシャリとたしなめられて苦笑する。
国光は靴を履くと玄関先においてあったテニスバッグを肩に担いだ。
「ではお祖父さん、俺達は出かけるので」
「気をつけて行ってこい」
私は国光が出てくるのを待つと国一さんに見送られながら手塚家を後にした。

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