そして君に恋をする

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「よしっと」
キャリーバッグを持って玄関に立つ。
母さんも父さんももう荷物を車に積み終わって中で待っているようだ。
急がなきゃなぁなんて思っていたら急に後ろから肩を掴まれた。
吃驚して振り返るとそこには息を切らせ立っている裕次郎の姿。
あれ……?今って部活の時間じゃないっけ……?
「楓ー?」
「もうちょっと待っててー」
早くして、と言う意味を含めた母さんの声にそう返すと私は裕次郎を見る。
「裕次郎…?部活は?」
「ぃやー……あがりちょー(東京)に帰るのか……?」
息を切らせながら話す裕次郎。
そうだよ、と答えるとグッと腕を掴まれた。
結構な力で若干腕が痛い。
「何でなにもあびらんっ!!」
眉を吊り上げて怒る裕次郎に小首をかしげる。
「え……だって永四郎には言ったし……」
「ワンには何も言ってねぇだろ?!」

「え……だって……裕次郎に言うと『お土産、お土産』五月蝿そうだし」

「やくとぅって……は……?」
お金ないんだよ、と呟いた私に裕次郎は間の抜けた声を出した。
だからお土産、ともう一度言った私にやっと裕次郎は手を離してくれた。
「あがりちょーに帰るんだろ……?」
「うん、春休みの間を使ってね。」
3泊4日だよ。と言うと裕次郎は頭を抱えて座り込んでしまった。
急にどうしたんだ?!
心配になって顔を覗き込むと顔をそらされた。
「裕次郎……?」
「あぬひゃー……ワザとだ…絶対ぇワザとだばぁ…」
「裕次「楓ー……」」
どうしたの?と肩を叩こうとしたら痺れを切らした母さんが窓から顔を覗かせていた。
あー、うん。と返事を返してもう一度裕次郎を見る。
裕次郎はもう立ち直ったらしく立ち上がって私を見ていた。
「あー……気をつけて行ってちゅーさぁ……」
「私がいない間部活頼むね、副部長」
「おぅ」
裕次郎はポンッと私の頭を撫でると笑みを浮かべた。
そんな裕次郎に笑みを返すと私は車に乗り込んだ。

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