黒崎一護中心地はここです。

□とある夏のはなし
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 柄にもなく、ごろりと横になる。白哉は、いつも自身が寝ている布団とは違う感触の『ベッド』というもので、惰眠を貪るというか、起きてはいるが、特になにも考えず、ぼーっとしていた。

(……一護のにおい)

 スン、と鼻を鳴らせば、鼻腔にふわりと流れ込む。最近布団でも干したのだろうか、所有者のにおいに加え、暖かなお日様のにおいもする。

 僅かに開いたカーテンの隙間から、夏の晴天が覗く。照明のついていない一護の自室は、冷房が利いていないにも関わらず、どこか涼しげである。

 思考を停滞させ、ぐったりとベッドに沈む白哉の背に、優しく声がかかる。

「どうした、白哉。やっぱ現世は暑いか?」
「いや……外は出たくないほどだったが、ここはそれなりに過ごしやすい」
「そっか。窓閉めてエアコンつけようぜ。その方が涼しい」

 気怠そうな白哉を気遣ってか、一護は窓を閉め、冷房のスイッチを入れた。唸るような音と、独特のにおいのある冷気が、少しずつ充満していく。

「今年も二人きりだな」
「…兄は」
「ん?」
「兄は、兄の家族らとは、共に過ごさぬのか」

 冷房がついても、ベッドから動こうとしない白哉が問うた。一護は床に座って、ベッドに背を預けてそれに答えた。

「家族もそりゃ、大事だけどよ。でも俺は、この時期にしか何日も一緒に居られねえお前と居たいんだ」

 白哉は聞きながら手を伸ばし、太陽のように仄かに明るい橙色の髪に触れた。

「夏と、冬。年に二回だけ、こうして白哉と一緒にいられる。家族と違って、滅多に会えないんだからよ。ちょっとくらい優先したって、怒られねえよな?」

 それは、白哉に対する質問なのか、はたまた別の誰かへ当てたものなのか、白哉には知り得ないことであった。

「……少なくとも、私はそれを咎める由はありはせぬ」
「…そっか」

 しおらしくなったうなじを擽り、首をすくめながら振り返った一護に、白哉は口付けた。

「ん、ふ…」
「はぁ……ん、は…っ」

 白哉が身を引けば、一護が身を乗り出す。ねっとりと絡む接吻の間に、じりじりと二人はベッドに重なった。

「白哉…」
「…わかっている。だが、聞きたい」
「うん……なぁ白哉。シてぇ」
「私もだ」

 白哉の上に馬乗りになった一護は、自ら白哉に口付けた。それを皮切りに、白哉も腑抜けにしていた体に力を巡らせた。

 冷房で下がる室温と相対して、二人の体温は加速度をつけて上昇していった。

「ぁ、うんっ」
「不思議なものだ。女子ではないのに、胸に触れると兄は蕩けるような顔をする」

 いつだかの初夜とは比べ物にならないほど慣れた手つきで、白哉は服の上から的確に一護の乳首を押し揉んだ。

 絡むような口づけで固く凝った二つの突起を、白哉は丁寧に扱う。決して痛みを与えるような真似はせず、擽るように、解すように、優しく触れる。

「はぁっ、ぁぁ…っん!」
「腕が震えているが、そろそろ代わろうか?」
「っんや、まだ、平気…この方が、なんかっ……」

 コーフンする、といやらしく切なげな顔で告げる一護に、白哉は目を細めた。淫らで、それゆえ愛しい。

 普段は性の気配など感じさせないような清潔さがあるが、一度その気になれば、誰も手をつけられない。

「白哉、白哉…っ下、足、でっ」
「…あまり乱雑に扱いたくはないのだが」
「い、からっ…白哉だから、少しぐらい乱暴でも…っ感じる」

 仕方ないと溜め息をつきながら、既に内側からジーパンを押し上げている一護の性器を、膝でぐりぐりと刺激した。

「あ、あっ、あ…」
「…一護」
「ははっ、やべ…腰、だんだんツラくなってきた…」
「だから、代わると…」
「いいって…んっ!自分の、体重でっ…けっこー圧迫されて、気持ちーから」

 圧迫、と聞いて白哉は眉を潜めた。このままでは一護の一護を潰してしまうのではないかと不安が過ったのだ。

「こ、の、ままぁっ…一回、イッ…イッたらっ…っふ、うぅーっ!んっ…代わろ、白哉っ…ぁ」

 股間に差し込まれた白哉の足に腰を擦り付けながら、恍惚と一護が言う。あまりにも卑猥なその姿に、白哉はコクッと喉を鳴らした。

「…兄が、望むなら」

 手と足を極力丁寧に…しかし性急に、一護の射精を促すように動く。白哉も、早く一護の準備をしないと、自身の限界も近かったのだ。

「あっ、うんっ!ひぃ、う、んんっ!」

 膝をずらすたび色っぽい声が一護の体と共に跳ねた。

 そして、一分とたたない内に、一護の体がぐっ、と強ばり、ぶるるっ、と震えた。

「――っはぁぁ…っ」

 くらりと体が傾ぎ、白哉の横に一護が倒れた。その顔は射精後の倦怠感と快楽で緩んでいた。

 一護をごろりと寝かせ、白哉は汗で湿った一護の頬を撫でた。

「あまり無茶はするな」

 口づけを落として、白哉は一護の服を剥いだ。






 
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