黒崎一護中心地はここです。
□好きっス!黒崎さん!
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自分を見つめる熱に浮かされたような目。真剣な目に、一護は少し薄く現実味を感じながら、何処と無くこういわれる気がしていた既視感のようなものに、口許を緩める。
変な気分だ。陳腐な言葉を借りれば、そんな簡単な言葉で。
「俺は…」
二度目の花火が上がり、二人の横顔を青や緑に染める。不安と恐怖の淡く滲む浦原の顔に、陰って表情の分かりにくくなった一護の顔が、数秒後の後に闇に呑まれる。
「俺は、この先もずっと、敵が現れれば、戦って、怪我とかも、たくさんするし…いつ死ぬかもわからなくて、迷惑もすげえかけるし…」
ぽつり、ぽつりと紡がれる言の葉を慎重に拾うように、浦原は黙って一護の声に耳を傾けていた。
一護は自分のなかで上手くまとまらない感情に焦りそうになりながらも、確実に伝えるために、ゆっくりと喋る。
「今までに、家族や、仲間も、大切にしてきたやつらは、たくさん泣かせちまったし、悲しい思いもさせた。…これからも、きっと、そうだ」
「………はい。きっと、そうっスね」
来るべき先のことを案じ、それでも目を逸らさずに、まっすぐに、受け止める。浦原のそんな気持ちを感じとり、一護もふっと微笑んで、覚悟を決めた。
それは、目の前にいるものを確実に傷つけ、しかし、確固たる愛をもって守り抜くという……正反対の、やさしい覚悟。
「浦原さん。もう一回言ってくれねえか」
「ふふ、恥ずかしいっスけど、黒崎さんのお願いならいやとは言えないっスね」
花火が上がる。弾けるその音に負けないように、浦原は先程より強く、嬉しげに、繰り返す。
「好きっス!黒崎さん!」
ドンッ!!
笑顔の浦原の顔を、はにかんだ一護の顔を、真っ赤な色に染める花火。
「俺もだ、浦原さん」
花火の光の消えた直後の、束の間の暗闇の中。
「んっ…」
「ぁ、っ…っ」
押さえ込んでいた衝動を溢れさせたように熱く、深く、二人は口づけを交わした。
「好きだ、浦原さん」
「はい、ス…っ」
「っ、ん…す、き…」
「んむっ!…い、ちご、さ……」
「…それずるいって」
次の花火が上がるまでも、上がってからも、人が空に目を奪われているその間―――愛する人だけを見つめ、また、深く口づけを交わす。
夏の暑さと溶け合うように。
互いの熱が交わるように。