黒崎一護中心地はここです。

□好きっス!黒崎さん!
4ページ/6ページ





 お待たせしました〜、と一護の背にのんびりとした声がかかる。何かあるのだろうと思って心配しそうになったが、杞憂に終わってほっとしたように一護は微笑んだ。

「こっちに来れるかー?」
「さすがにちょっときついっス〜」

 振り替えって、人混みのなかに見える大きく降られる手に吹き出し、それでも一護は浦原のもとに向かった。
 へらへらしている浦原には邪魔だとばかりに押し返していた群衆も、大きく威圧感のある一護には、臆して自ら道を開けた。

「大丈夫かよ、浦原さん」
「えぇ、なんとか」

 人と人の間から自分の方に伸ばされた腕を強く引くと、すっぽんと、意外に呆気なく浦原が出てきたため、一護は咄嗟に抱き止めた。

「わり、力加減間違えたわ」
「い……いえ……問題ないっス」
「……妙な間開けんなよ…」

 体を離すと、暗くて見えにくいが、前髪に隠れた顔が赤く染まっているのがわかり、つられて一護も赤くなる。

「…い、いきますか」
「あ、ぁ…そう、だな…」

 お互いにぎこちなく会話をしながら、人混みのなかを流れるように進んでいった。
 時折はぐれそうになる浦原の手を引きながら、一護はずんずんと回りを気にせず大股で歩く。

 花火大会開始まで、一分を切った。

「そろそろだよな」
「そうっスね」

 正面から少し逸れたが、人の少ないところに腰を降ろした二人は、殆ど無言でその一分を過ごした。

 浦原は、出掛ける前に悩みに悩んで、ある決断をしていた。

(黒崎さんに、告白する。花火が上がったら、そのとき―――、)

 戦場に出ても顔色ひとつ変えず、飄々としている浦原が、震えている。気づいた一護は、思い詰めたような顔をした浦原を心配しながら、しかし、声を掛けることを憚られる真剣な目に、なにも言わずにいることにした。


 ヒュ〜〜………、

「………ちょっと、聞いてほしいことがあるんス」
「なんだよ、急に」

 そして、濃紺の夜空に、赤い花が咲く。


 ドンッ!!


「好きっス、黒崎さん」






 
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ