黒崎一護中心地はここです。

□好きっス!黒崎さん!
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 がやがやと大勢の人が混雑に足踏みするなか、二人の男がすいすいと人の合間を縫うように、止まることなく進んでいた。
 少し距離が開いても、二人はお互いの位置をきちんと把握している。どちらかが気になった屋台があり足を止めると、合わせて足を止めた。

 焼きそばやたこ焼き、浦原は昼間食べていたが、二人で味の違うかき氷を買った。ふざけて取り合いっこをしながら、そこそこ腹が膨れるまで屋台巡りをした。

「どうも、ごちそうになりました。今度遊びにいらしたときには、何かプレゼントさせていただきますね」
「いいよ、そんなん。それより早く、場所取りにいかねえと。混んで見にくくなっちまう」
「それもそうっスね」

 もう既に空は濃紺になり始め、一番星など疾うに出てしまっていた。
 一護のあとに続きながら、微かに招かれざる者の気配に気づいた浦原は、不満げに眉根を寄せた。

「…全く、今日ほど邪魔だと思ったのは初めてっスよ……」
「どうかしたか、浦原さん」
「いえ、早く行きましょ、黒崎さん」

 浦原の様子が少しおかしかったが、隠されるなら深追いはせず、一護は笑顔で「そうだな」と笑った。



「ちょっとトイレ行ってきてもよろしいでしょうか、黒崎さん」
「あ?別にいいけど、はぐれたら面倒だしな。ついでに俺も…」
「ああいえ、霊圧を辿ればすぐ追い付けるので、先に行っていてください」

 一護の返事も聞かないうちに、からころと下駄を鳴らして走り去ってしまう背中を見送り、一護は浅くため息をついた。


 霊圧から一護は追ってこないとわかり、ある程度距離を開けて、浦原は走るのをやめた。人目につかないところで携帯を取りだし、とある人物に電話を掛けた。


「…あぁ、もしもしアタシです〜」


 いつもの胡散臭い声音で、邪魔をされないように手を打つ。


 通話は約二分。浦原はこれでいいでしょうと含み笑いして、一護のもとへと早足で向かうのだった。





 
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